140字プロレス鶴見辰吾ジラ

夜明け告げるルーのうたの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
3.8
”優しくて残酷で美しい世界”

2017年ともいよいよお別れのとき
個人的な今年の好きな映画のテーマは
「寄り添ってくれる映画」でした。
最後に鶴見辰吾ジラの”グッドシネマオブザイヤー”
も紹介いたします。

2017年の最重要監督となったのは、ドゥニ・ビルヌーヴでしょう。「メッセージ」「ブレードランナー 2049」のあまりにも巨大なエネルギーを放つ2本の映画を世に送り出しました。そして邦画界では、「夜は短し歩けよ乙女」、そして今作「夜明け告げるルーの唄」の湯浅政明監督が素晴らしかったです。邦画アニメ界の重要な2本を世に送り出しました。今作「夜明け告げるルーの唄」は、湯浅監督らしいデフォルメ化に振り切った絵柄と、アニメーションならではの圧倒的躍動を気味が悪いまでに爽快感をもってデフォルメ化した状態で描き切る、言葉にし難いスタイリッシュさ、感覚的高揚感に支配されていました。

「夜明け告げるルーの唄」は湯浅監督のオリジナルアニメーションがゆえに圧倒的な情報量に加え、暴走気味にも思える熱量の空回りから見られるクリエイターの体温が伝わってくる作品になっていたと思います。今作は”ボーイ・ミーツ・クリーチャー”系列であり、ジュブナイル×モンスターという過去に何度も繰り返されてきた、少年が大人になるにあたって経験するファンタジーと弱さとの向き合いと喪失です。今作のヒロインの人魚の設定にゾンビやヴァンパイヤ性を持たせることでの”死”のチラつきや、そこに絡められる”ポスト3・11”の災害と喪失と絆。大きく寓話化された世界の中で、「優しさ」「残酷さ」そして「美しさ」を終盤のディザスター描写と唄のマジックと圧倒的な躍動にて描くシークエンスの連発は圧巻です。災害と喪失の物語に過去の過ち後悔に対しての救済を与えるシーンは残酷ながらも美しく、素直に泣けました。スピルバーグ監督の「E.T」の如くファンタジーと冒険と喪失の先の主人公を、優しく包み込む世界の燦々と降り注ぐ太陽の光が目に染みて、また涙がでるのでありました。ありがとう!!



それでは最後に
鶴見辰吾ジラの「グッドシネマオブザイヤー2017」
※傑作ではないが琴線に触れた映画を打線形式で発表

1(遊)牝猫たち
→白石監督の打率に震える。
2(三)皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
→昨今は2番打者に強打者を置く。
3(右)ザ・コンサルタント
→憧れの欠損型ヒーロー。
4(捕)ジーサンズ ~はじめての強盗~
→泣ける・笑える・考えさせられるの三冠王。
5(中)GODZZILA ~怪獣惑星~
→意欲剥き出しの新たなる「2001年」?
6(投)帝一の國
→漫画原作の成功例はコント化にあり。
7(一)ウィッチ
→西洋的精神ホラーの決定版。
8(二)ジェーン・ドゥの解剖
→ギミックと嫌らしさのマッチするホラーの快作。
9(左)暗黒女子
→第4の壁を偶然にも破壊した千眼美子
代打の切り札:スプリット
→シャマランにはやはりついて行ってしまう…抗えない感動。
抑え:ハードコア
→高揚感火の玉ストレート。
監督、パージ:大統領令
→哲学式B級アクション

以上になります。
皆様の琴線に触れたグッドシネマは何でしょうか?
それでは、また来年もよろしくお願いします。
良いお年を!!