140字プロレス鶴見辰吾ジラ

さらば愛しきアウトローの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)
4.0
【凪を忘れた男】

80年代を思わせるざらついた粗い粒子で曇ったフィルムが映すのは、枯れても枯れぬロバートレッドフォード演じるフォレスト・タッカーという男。彼は老練な犯罪者、銀強盗、アウトロー。エドガー・ライトの「ベイビードライバー」は、チャカチャカ動いてやかましい!と言わんばかりの落ち着き放った彼の手順。ハイウェイで故障した女性の車越しに走り去るパトカーのシークエンスなんて最高に格好良い。思い出せば出すほど主人公に魅了される背徳的憧れ。しかしこれが紳士の本質と言わんばかりの鮮やかな銀強盗の連続的なハイライト。カフェでの会話やダイナーのトイレでの刑事とのやり取りのフェアゲームに、惚れた女性の前で冒険心を掻き立てるブレスレットを手にしたまま店を出ようとする非日常の悪戯心。車のバックファイヤーがここまで刺激的な映画は早々お目にかかれない。別れ際のキスシーンのエモーション、カーチェイスの末に傷を負う儚さ。それでも凪を忘れた彼の人生が脱獄シーンのハイライトとともにお茶目に流されるシーンに微笑みをも盗まれる。ラストシーンまでフォレストタッカーおよびロバートレッドフォードという俳優の魅力に尽くす本作の映像が粗い粒子によって装飾されたなら、我々はあの頃アウトロー映画が上映した時代にタイムスリップしたかのような錯覚を味わえる。素敵でささやかな非日常。