B5版

ハウス・ジャック・ビルトのB5版のレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
3.1
んん〜飲み込み辛い作品…
トリアー監督作品は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と「奇跡の海」を鑑賞済です。
私は上記作品の身勝手で独善的、実に人間的な感情がもたらす衝動と、到底理解できない純度の高い自己犠牲の精神、それゆえの破滅的な美しさを醸す悲劇に惹かれてまして…
今作、予告編を観て毛色が違うとわかりました。
が、結局同様の感情セットパックを期待してた私は、もう、超絶な張り手で拒絶されたような心地です。

カンヌの問題児と元々聞いてましたが、どうも今回は矛先が違い、徹頭徹尾「監督による監督のための監督作品のキュレーションムービーforカンヌ」であり、自らの軌跡を綴った自伝的映画にみえました。
トリアー監督自身も今作主人公と同様に強迫性障害(OCD)を公言してますしね。

「家」を建設しようと試むも、アートは誰にも理解できないと言っては自分の凡庸さが明らかになることを恐れ、手を変え品を変えスクラップアンドビルドのアプローチを繰り返す過程が監督の映画作りなのだとしたら面白いけど、
私がトリアー映画に求めていたエッセンスの最終形態があの「お家」なんだと言われると、どうにも傷つくッス…

しかし観客をドン引きさせる難解で不快な内容ながらも、物語に惹きつける力はなぜか高い。
例えばしばしば挟まれる、凄惨な犯行と至って真面目な独白、神の手による超常的な加護の三つ巴が相まったシリアスな笑い。
潔癖症な割に大雑把な主人公の奮闘からの、雨道の下りなんて特に笑ってしまった。
また、遺体描写も精巧でスプラッタ映画と比べても遜色ない優秀な出来なので、ついまじまじとみてしまう。

シニカル!陰鬱!不条理!といえばお馴染み、ミヒャエル・ハネケ監督ですが、彼は地に足ついた現世寄りなテーマを好んでるし、尚且つロマンチストだと感じてるので、今後私のこの感傷はハネケに預けるね…

でも私はまだ監督のハッピーエンド()作品を全然諦めてないので、カンヌは新作が出来たらまた呼んであげてね。
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