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ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリーの小のレビュー・感想・評価

4.4
お仕事ムービープラス心あたたまる愛の物語。お仕事部分だけでも面白いのに、夫婦の愛にジーンとする。監督に代わって絵コンテを描くハリウッドのストリーボード・アーティスト(絵コンテ作家)の夫ハロルドと映画リサーチャーの妻リリアンを取り上げた、素材良すぎなドキュメンタリー。

『十戒』『鳥』『卒業』など誰もが知る名作の絵コンテで監督の創作を支えたハロルド。『史上最大の作戦』『ゴッドファーザー』『フルメタルジャケット』など数々の作品のリサーチャーとして、映画のリアリティを支えたリリアン。

そもそも絵コンテ作家や映画リサーチャーなる仕事があるとは知らなかった。さすがハリウッドって感じ。そして二人の凄いところは、指示されたことを正確に行えばよいだけに思ってしまいそうな仕事を、映画制作に欠かせない創作活動へと自ら高めていること。

ハロルドの凄さは、自らが監督になりきっているところ。ざっくりとした台本から巨匠たちが何を考えているのかについて想像力をフル回転させるだけでなく、巨匠をも超えるプラスアルファもし、映画史に残るシーンを生み出していく。彼の絵コンテを再現するかのように生まれた名シーンを見ると、ハロルドなしに巨匠は巨匠たりえない気がしてくる。

リリアンは、資料を管理し即座に引き出すデータベースとしての能力も凄いけれど、もっと凄いのは資料がないものへの飽くなき探求心。わかるまでとにかく徹底的に調べる。取材の対象は裏社会にまで及び、その人脈はCIAも驚くのではないかと思うほど。何気なく見ていた映像ができるまでに、これほどの労力があったことを知ると、観る意識も変わってきそう。

彼らは人柄も良く、若手の育成にも出し惜しみをしないから皆に愛される。映画製作会社ドリームワークスの大ヒットアニメ映画『シュレック』に登場する国王と王妃の名前がハロルドとリリアンなのは、2人をリスペクトする人たちの気持ちの表れだという。

お仕事ムービーとしてだけでも十分面白いのだけれど、2人の愛の物語がまた素晴らしい。恵まれない環境で育ったリリアン、彼女との結婚に猛反対するハロルドの親族、ハロルドと結婚したリリアンの本音、自閉症の長男のこと、ハロルドを襲った悲劇のこと。順風満帆でなかったからこそ、愛を育み、強くなっていったようにも思う。

「結婚が長続きしないといわれているハリウッドで、60年も添い遂げたことに、一番びっくりしているのは自分たち」と笑うリリアン。長続きの秘訣とは…。答えはコメント欄で(他のネタバレもあります)。

彼女の言葉だからこそ、とても輝くその秘訣。これができれば夫婦は最強というけれど、今の自分にとってはまぶしすぎるかも。

●物語(50%×4.5):2.25
・どちらかといえば、自分の側に近い普通の2人が精一杯生きてきただけなのだけと思うけれど、ドラマチック。

●キャスト、演出(30%×4.5):1.35
・ハロルドとリリアンがとにかく最高でしょ。

●映像、音、音楽(20%×4.0):0.80
・ラブストーリーの絵コンテがナイス。
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