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移動都市/モータル・エンジンのneroのレビュー・感想・評価

4.0
『SFは絵だ!』って、まさにこれだよこれですよ!! 野田元帥に観てほしかったねえ。
原作発表が2001年、創元社から日本版出たのが2006年で、その年の星雲賞をとったんで読んだんだ。すでに手元にもなくよく覚えてないけど、確かに少年冒険アニメっぽい印象だった。その後シリーズは続いて現在第4部とのこと。
で、第1部準拠の本映画の仕上がりはといえば・・・♫「空にぃ聳えるぅ鉄の城ぉ~」 もー開幕からテンション爆上がり! 超弩級移動都市倫敦の造形がとにかくたまらん!! デカくてゴツくて硬くて強くてゴロンゴロンでグワラングワランで、地響き立てて大地を突き進むその雄姿に、もう頬がゆるむのが止まらん。巨大メカバトルアクションアニメを観ている気分。これならマクロスだって実写化できちゃうぞ。

とにかく画作りが凝りまくり盛りまくり乗りまくり。量子兵器メデューサの破壊表現なんざエーですねえ。履帯というには巨大すぎる無限軌道進攻痕の描写といい、空中都市とか海上刑務所とか楯の壁の要塞都市とか地中戦車とか飛行機械とか、銃器類の小物に至るまで、ピーター・ジャクソンの趣味全開度が最高に心地よい。いやー大好物であります。でっかいスクリーンで見なくてどーするよってシロモノだっ! 明日も行くぞっ!! 今度は最前列で見ようっと!! なんたってガラ空きなんだから(笑)

主役(原作ではね)のボクちゃんがヘタレで影薄いのがいい。彼の動きを目立たたせていないので、復讐に燃えるキツ目のお姉ちゃんがツンデレぽくリードして、へたに人間ドラマにならずに済んでるのがいい。みんな結構サクサク退場していくしね。
もとよりキャラクターの内面とか本質への肉迫とかは望まない。でも復活者シュライクはいいキャラなので、次作ではぜひ復活してほしいぞ。

説明の足りない世界観にいーかげんな設定のキャラクター、キメラの如きツギハギストーリーと、映画としては低評価なのもわからんでもない。冒頭以外はオリジナリティ満点ともいかないしね。クライマックスの盛り上がらなさなんざ、ちょっとないくらいヒドい。
それでも、リバース監督はよく収めたと思うし、テンポだって悪くない。なによりあの原作からこの画にまで仕上げたピーター・ジャクソンの執念に押し潰された(体重にかもしれないけど)。
このうえは願うのはひとつ。いかに興収が悲惨なことになろうとも、是非続編を頼むよジャクソン。ディスクも買うからさあ。


<追記>都合4回目の吹替版で監督評価UP
本国で評価低かった(ロッテントマトで26%!)のは、アジア圏に西欧文明が屈服するのがそんなに嫌だったのかい?って嫌味のひとつも言いたくなるくらい。そんなにボロクソ言われるほど悪くないと思うなあ。カメラアングルもキレがいいし、画面転換やキメ絵への導入も決まっている。
まあね、吹替翻訳はかなりこなれていて字幕版での舌足らず感はかなり軽減されてはいたけれど、やっぱり原作斜め読みでもしてから観ないと、画面や行動の意味が伝わらんだろうと思える箇所が散見されるのはしょうがない。用語関連の説明不足はSF映画の宿命でもあるが、殆どは世界観に直結するタームであったりするから余計にね。腸=ガットとかキルケとかオールドテクとか都市淘汰主義とか、音だけで聞かされてもわからないよねえ。かといってそれらを全部説明していたら尺は伸びるしテンポも阻害する。下部に文字情報で出すってわけにも行かないんだろうしね。
絶賛とはいかないし、制作側からのノイズも多かっただろうと察するが、すべて承知の上で1本の映画としてまとめきったクリスチャン・リヴァース監督の力量は充分に感じたよ。
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