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孤狼の血の小のレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.2
休みの日のまとめ鑑賞の最後に観たにもかかわらず眠くならなかった。刺激が強いから。

昭和63年の広島の架空都市・呉原では2つのヤクザ組織の対立がくすぶっていた。その所轄署に新人刑事・日岡秀一(松坂桃李)が配属となり、大上章吾刑事(役所広司)と組むことになる。ヤクザの捜査では右に出る者のいない大上だが、その方法は向こうの世界に片足突っ込んでいるようなもの。

年齢もタイプも異なる凸凹コンビのバディムービーかと思うものの、2人が組むのは仁義なきワケがある。ヤクザもヤクザなら警察も警察。映画はもちろん、テレビの2時間ドラマなど、長めのストーリーではお馴染みなことかな。

組織の掟(人間の感性を不自然に矯正)と、人情(自然な感性)が対立する中、大上の意外な能力と実力が明らかになっていくことで、日岡は心を揺さぶられ、しだいに変化していく。

引き付けられるストーリーを、暴力描写に定評があるらしい監督が、グロさ、えげつなさてんこ盛りに、迫力満点に描くから面白い。それにしても役所広司ってやっぱ凄い役者さんですね。松坂桃李もナカナカで、今年は彼の年かも。

またこの物語の世界観は、次のようなことではないかと思う。

社会にはその<規範に合わない(合わせたくないか、合わせることができないか)人たちが一定数は不可逆的に存在する>のだから<暴力団の問題は、彼らが社会の秩序にとってできるかぎり破壊的ではなく、一般市民にできるかぎり迷惑でない形で彼らが収入を得、自尊心を保つ方法があるかどうか、あるとすればどういう方法かという問題である>(『二十世紀を精神分析する』(岸田秀著)の「暴力団と神経症の症状」)。

続編があるとするならば単なる継承ではなくて、新たな方法を編み出し、実践する者の物語を観たいけれど、それだとヒューマンドラマになったりして。設定だけ引き継いだオリジナル脚本を、今を時めく是枝裕和監督でどうでしょう、って…。

●物語(50%×4.0):2.00
・世界観をまずまずうまく表現しているのではないかという気が…。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・グロイねー。役者さんがみんなイイ。なお、本作を観て『娼年』も観ておこうと思いました。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・真珠あり、迫力あり。
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