馮美梅

29歳問題の馮美梅のネタバレレビュー・内容・結末

29歳問題(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

主人公29歳。後1ヶ月で30歳を迎える化粧品会社に勤めているクリスティ。所謂、意識高い系女子?キャリアウーマン?仕事は社長からも認められ充実してるかのようだけど、一体自分が何のために仕事をしているのか?お金を貯めるため…でもその先は何?お金を貯めてどうする?長年付き合ってる彼はいるけれど、結婚するわけでもないし、彼は仕事で出張が多くてすれ違い。

実家の父は痴呆でこちらの都合関係なく四六時中電話をかけてくる。

毎日毎日、あなじことの繰り返し。友人同士の女子会は楽しいというよりも、もはや義務みたいな感じだったりする。まあ、そういうことも大事ではあるからって感じ(自社の化粧品を愛用してくれてる顧客だったりもするし)?そんな友人に映画「花様年華」のポスターをプレゼントしたり、お付き合いもななかなか大変。しかしそんなある日突然、大家から家を出て行ってくれと言われる。

困ったところに、大家の甥の友人が1ヶ月家を留守にするからと仮住まいさせてもらうことに。

この大家が硬軟天師の林海峰、そして、よく利用するタクシーの運転手が硬軟天師の葛民輝と何とも私的には嬉しいキャスト。

仮住まいの部屋はとても雰囲気がいい部屋で、そこの主人は黄天樂という女性。生まれて初めてパリに旅行に行くからそのあいだ、部屋を使って良いと。彼女の部屋には2匹の亀が同居しているけれどその名前がマギーとチェリー(笑)これもすぐ反応してしまったよ。

そしてパリに行きたい理由も大好きなレスリーのドラマ「日落巴黎(この作品に出演してるのがマギーチャンと、チェリーチェン)」が大好きだから。仲のいい幼馴染の漢明(男性)がくれたぬいぐるみと一緒に旅立った。

全く違うクリスティと天樂だけど、偶然にも生年月日が同じだった。彼女が残していった彼女の日記(生い立ちが書かれている)を読むクリスティ。

自分はキャリアも見目も天樂よりも充実しているはずなのに、なぜかなんでもない日常を生きている天樂の方が幸せに感じてしまう。

徐々にそんな生活が苦しくなって行くクリスティ。中古レコード屋さんで働いていた天樂。そこの店主が鄭丹瑞。

80年大90年代の香港の音楽や映画が好きだった世代にはたまらない伏線がたくさんあって、後半に実はクリスティと天樂はお互いを知らずに繋がっていたことがわかる。(バスでの会話から保険のチラシを渡すシーンも後々凄いなぁと)

クリスティの父の死、そして天樂のことを知れば知るほど、今の自分とは何なのか悩むクリスティ。

クリスティのシーンは結構、無機質なトーンって感じなんだけど、天樂のシーンになるととにかく、カラフルで、どんな時も笑顔で、なんでもないことでも楽しく生きているように見える。大切な漢明と楽しい日々。でも本当は彼女にも過酷な運命が待っていた。

天樂のシーンになると涙が溢れてきてしまう。悲しいシーンではなくても、なんだか心が揺さぶられてしまう。彼女が初めて行ったコンサートの回想シーンにビヨンドの黄家駒の映像と音楽が、映像の中のワンシーンの家駒の姿だけで、もう私にとっては涙モノ。そして天樂の初恋の人と再会のシーンで流れるビョンドの「早班火車」にまた胸熱で涙しながら、初恋の人がいつの間にか本物の張國強になっていたり(初恋の人が彼女には張國強に見えていた)小憎い演出がいたるところにあります。

天樂が乳がんだとわかって、それを聞かされた漢明に天樂が胸を触ってとか、セックスしようというけれど、それは旅行から帰って手術が成功してからでと優しく言う漢明とのシーンにまたも心で号泣。

仕事ができても心が満たされないとそれは幸せじゃないと感じたクリスティ、彼女のその後はどうなっただろう。後半のクリスティと天樂の出会いの数々のシーンを見ると、改めてもう一度見直したいと思いました。

別に29歳と30歳に何か違いがあるのかどうか私にはわからないけれど、人それぞれ何か分岐になる年齢ってあるのかなぁ。

黄天樂を演じたジョイス・チェンはあの肥姐「リディア・サム」と「アダム・チェン」の娘だったのにはびっくり。(リディアはレスリーと親交もあつかったですから)そして張漢明演じたベビージョン・チョイが素敵でした。(かっこいいと言う感じではないけれど、佇まいが)

香港の意識高い系女子たちとそうでないと天樂と漢明の何気無いただ笑顔で笑ってる毎日の人たちとの対比なども楽しめるし、決して悲しい物語ではありません。でも私は心揺さぶられで、心も号泣という素敵な作品でした。
馮美梅

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