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嘘を愛する女の小のレビュー・感想・評価

嘘を愛する女(2018年製作の映画)
3.7
偽りの彼は、その愛までもが偽りだったのか?というテーマに巧みなストーリーではあるけれど…と思いつつ、感想を書いているうちに自分の考えに変化が。

気になったのは、ヒロイン川原由加利(長澤まさみ)の相手役、小出桔平(高橋一生)の方。彼が運転免許証や医師免許証を偽造してまで職業や名前を偽り、過去と決別した理由が後で判明するのだけれど、最終的にオチを知った後でも、彼は本当に彼女を愛していたのかと疑問に思う。

彼は偽造という罪を犯してまで自分を偽る必要があったのかが、想像力不足なのか、自分にはわからない。それ程までして忘れたいのであれば、彼女への愛もまた、過去を忘れたいがための偽りではないだろうか。

彼の愛が本当だと、私が納得するためには、彼は自分を偽ることなく、自らの過去と向き合い、乗り越えないまでも受けて入れている人物像であって欲しい。この物語では、彼は見事なまでに過去と向き合っていない、と感じる(どこか見落としているかも)。

そんな彼でもヒロインは良いのかもしれない。彼女もまた、自分の気持ちが一番大切な人のように描かれる。過去に対してあんまりな彼でも、彼女自身が望んだストーリーを描けるのならば、それに乗っかって生きるのもアリなのかもしれない。

と、ここまで書いてみて『嘘を愛する女』というタイトルに、なるほどそうかもしれない、と思ってきた。私の家族にだって私の知らないことはあるかもしれない。でもそれを根掘り葉掘り追求したり、しようと思ったりはしない。

そういうありようをはっきり言えば「嘘を愛する」ということになるのかもしれない。もっとも、だからこそ真実を知りぶつけ合えることを目指すのだけれど、それだけでは、上手く行かないだろう面があることもまた真実かもしれない。感想を書いているうちに、プチやられたかな、思った映画。

●物語(50%×3.5):1.75
・鑑賞直後はなんかノレないなあと思ったけれど、感想を書いているうちになるほどと。考え過ぎかしら。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・個人的にはヒロインのキャラクターと長澤まさみさんの演技、嫌いじゃないです。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・やっぱり瀬戸内海の風景がグッド。
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