マヒロ

心と体とのマヒロのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.0
とある食肉加工場で、産休に入った検査官の代りにやってきた女性・マーリアは、潔癖症の完璧主義者で極端にコミュニケーションが苦手な変わり者だった。上司である財務部長のエンドレはそんな彼女を気にかけてはいたが、ひょんなことからお互いが全く同じ夢を見ていることを知り、急接近していく……というお話。

予告編を見かけたくらいの知識しか無かったけど、周りに馴染めない女性と人生に疲れた中年男性がちょっとしたきっかけで惹かれあっていく……という、思ってた以上に分かりやすいラブストーリー。
雪が降り積もる森の中で過ごす鹿という2人の見る夢の幻想的な風景、押し付けがましく感情的にならないキャラクターのやり取りや全体的な演出、そして余りにも不器用すぎる2人の付かず離れずないじらしさなど、どの要素も良い塩梅で観ていて心地よい気分だった。
人に触れられるのが苦手なマーリアが、それを克服するための練習として何故かマッシュポテトをムギュと握ってみたりするシーンの変なフェティッシュさとか、何となく『アメリ』を思い出したりもした。

食肉加工場が舞台であるというところがかなり特徴的なところでもあって、序盤にはじっくりと牛の解体の場面を映すという割とショッキングな場面もあり、さっきまで生きていた牛があっさりと肉の塊になってしまう無情さは、広い目で見れば所詮人間も一皮剥いたらただの動物よというどこか一歩引いた目線を感じた。まぁ、真意は掴みかねるところもあるが、この生々しさが後の恋愛模様の嘘っぽい絵空事感を薄めていたようにも思える。……このシーン、食事しながら観てたので流石に牛の首がコロリと落ちて断面が見えたりするあたりはゲンナリもしたけど。

夢の場面で出てくる鹿や解体場の牛など、動物達の演技もなかなか見どころで、2人の心境とリンクするかのように不器用に触れ合う鹿や、加工場に運ばれていく前夜に不安げに視線を交わす牛など、まあたまたまそういう所が撮れたから使ってるんだとは思うが、ハッキリと意思を持って動いているかのように見えるのが面白かった。

(2019.217)
マヒロ

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