タケオ

シェイプ・オブ・ウォーターのタケオのレビュー・感想・評価

4.5
鑑賞後に気付かされた。
映画を"鑑賞"しているという感覚を完全に奪われていたことに。
例えるならタイトルが示しているような"水"の中にいる感覚だろう。
息苦しく、危険で、冷たく、熱く、固く、柔らかく、そして何より美しい。
私は123分間この映画の中を"漂っていた"のだ。

第90回アカデミー賞作品賞や監督賞を受賞するなど高い評価を受けている本作だが、まずはじめに主演女優賞にもノミネートされたサリー•ホーキンスの特有の風貌と佇まいが作品に非常にマッチしていて素晴らしい。

決して美人という訳ではない。ただ、何気ない日常行動や不器用ながらも一所懸命に"彼"を救おうとする姿の中に"美しさ"を感じずにはいられない。デルトロ監督の「彼女をイメージして脚本を書いた」という発言も十分に頷ける。

そして何よりも驚かされるのは奇抜かつ過激な描写の数々だ。

大筋は王道恋愛ストーリーだが、声を発することのできない主人公が恋をする相手はイケメンでも魔法をかけられた野獣でもく生々しい半魚人、たびたび挿入されるイライザの自慰描写、"彼"が猫を食べる衝撃シーン、容赦ないバイオレンス描写など美男美女の恋愛映画に慣れ親しんできた方ならドン引きするようなシーンが多数用意されており、表面的な美しさを求めにきた鑑賞者は間違いなく途中でふるい落とされることになる。

本作で描かれるのは言語も容姿も種族も理解も常識も超越した正に"究極の愛"なのだ。

また、芸術的な映像と優雅な音楽、俳優陣の繊細な演技や演出の美しさに思わず溜息が漏れてしまう。第90回アカデミー賞作曲賞と美術賞の受賞も十分に納得だ。

水のように表現することはできなくとも確かにそこで煌めく愛の物語がたどり着く夢か現か曖昧なラストの美しさは、とてもじゃないが形容できない。

私たちの次元を遥かに超えた2人だけの愛が永遠に続くことを願いたい。
タケオ

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