140字プロレス鶴見辰吾ジラ

アナと雪の女王2の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

アナと雪の女王2(2019年製作の映画)
4.0
【コールドケース】

Frozenの2作目。エルサの覚醒だった前作からエルサの謎を追い王国を救うアクションアドベンチャーへと進化している。そこにアナとクリストフの心すれ違いとその顛末、オラフの成長による価値観の変化をミックスしたボリューミーな100分。ボリュームに対してのランタイムの問題もあり端折るような駆け足さが複雑化した物語の架け橋を阻害してるが、前作のキャラがジェスチャーゲームで遊ぶシーンはほのぼのとした日常を描くメリットも作っている。楽曲は前作の鬱屈した鑑賞側にもヒットして心に残るが、成長モノとなった本作は軸として「イット」シリーズのトラウマ撃破、大人になるためのペニー・ワイズとの決闘とも似ていることもあり、単に大人へとシフトを上げるゆえの複雑さがブロックバスター要素から引き算的な動きをしてしまっている。

frozen=コールドケース的な過去の謎を追う中で、かつての魔法があった世界というファンタジーの定番を設置するも、川の流れのイメージや自然共存主義が日本的で、オラフ含め無常観を語り出したり、歌い出したりと「アナ雪2」は吉田兼好の「徒然草」となっている。そこへ川の流れは海へとそして…という円環構図から記憶媒体として水を意識させたのは巧い設定とここは感心。

前作よりも不穏さの強調や荒れ狂う海のイメージ、暗さやダークファンタジー要素が増えたこともあり物語的な陽要素が半減したが、まさかのクリストフのダサダサの恋愛ソングPVをクソ真面目に実行したことに感激。あのシーンの体温が一番感じられるシーンだった。

フィヨルドと非自然的なダムの登場や「WAVE」よりも予算を注ぎ込んで描くあのシーンは素晴らしい。あとエルサのドレスから見える肌のイメージや素足が前作からの圧倒的に進化してる。

「シュガーラッシュ2」や「トイストーリー4」に通ずる解放運動とはまた違う彼らが大人になって「やるべきことをやる。」ことで世界に帰属していく成長は素直な嬉しさに満ちているし、無常観はあれど前向きな変化や変わらないモノを探ろうとする心意気はあるべくしてある続編と言える。

「風の谷のナウシカ」にも通ずる自然の循環構造を川の水として、それが記憶媒体であり知識の源=知識の泉の如く描いていたことが何より凄い!と思い、ラストにオラフが発するメタ的な物言いもニヤリとさせられる。

前作よりも圧倒的に今作が好きで、心の解放が次に未知への探求となったことで前向きに大人になろうというエールのようにも思えた。前作は薄さが見えるプリクエルだったが、本作は楽曲は下火だがストーリーは抜群に好きといえるそんな続編。