とりん

ボヘミアン・ラプソディのとりんのネタバレレビュー・内容・結末

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

言わずと知れたUK最強のバンドQueenの伝記映画
正直彼らの音楽はベストを少し聴いたくらい
バンドについてもボーカルのフレディがゲイであり、20年以上前にエイズで亡くなり、それでもゲストボーカルを招き、バンドは存続しているという知識のみ
今回映画を観るにあたり特にバンドに対する知識を入れずに観に行った
その結果、このバンドがどういったものか、何を目指し、どういう気持ちで曲を作り、ライブをしていたのかということを知ることができた

この映画はQueenというバンドの映画でもあり、それと同時にボーカルである亡きフレディ・マーキュリーに捧げる愛ある映画だということを感じた
むしろ後者の印象が強い
もちろんバンドについても描かれているが、フレディ主体に描かれている部分は大きい
彼が将来を考えず、父親の良き行いをしろと言うことに逆らい、夜遊びをしていた頃、Queenの前身バンドと出会い、そこに加入し、ブレイクする様子を描いた前半
これまでになかった形のロックを形成し、一つのジャンルにとらわれず、さまざまな音楽を作り出して、スターダムを駆け上がっていく

契約した相手の言うことにも生意気な態度で啖呵を切り、自分たちの意思を曲げないところにスター性の面影を感じる
そこで生まれた曲が彼らの代名詞と言える代表曲であるBohemian Rhapsodyであり、大胆な音楽構成のこの曲は周囲の予想とは裏腹に大ヒットを記録した
これを観ていた時にこのバンドってこんなスターダム街道まっしぐらのバンドだったかなという疑問があった

その疑問が的中するのが中盤あたり
アメリカを始め、日本など世界各国で知名度を上げ人気を獲得、フレディ含めメンバーたちも次々と結婚し、富名声プライベートのいずれも順風満帆に見えた
しかし次第に見えてくるフレディの孤独感と焦燥感
それは自分でも認めるのが怖かったバイセクシャルならぬゲイだということ
最愛だと思っていた妻も実は心から愛していないのではないかという葛藤、妻の疑心感もあり、摩擦が生まれ、別れることになる
そんなプライベートとは裏腹にバンドはさらに人気を拡大していく
孤独感を埋めるために急にパーティを催したり、連夜飲んだりドラックに明け暮れたり、ついにはデビュー当時から制作を共にしていたポールに乗せられ、自由になれという言葉から、フレディとバンドを衝突させ、Queenは解散の危機に陥ってしまう
ここでのフレディの焦燥感や孤独感、家族と思ってきたバンドにぶちまけてしまった暴言、そしてソロになってからの作曲などによる多忙による衰退、この流れをうまく表現していた
徐々に明らかになる闇と孤独感を募らせて行くフレディは見ていてどんどん心が締め付けられるようだった

そこから解放してくれた気づかせてくれた元妻の存在、この後生涯友達となる
あれほどプライド高く気を張っていたフレディがバンドメンバーをなんとか呼び戻し、もう一度バンドをやり直させてくれと頼み込む姿はなんとも弱々しく、これまでとのギャップにまた胸打たれた
この時点で涙腺はだいぶきていたが、そこからエイズの発覚により再び閉ざされる心、それを受け止めたバンドメンバー、その想いを抱えながらのLIVE AIDへの参加、これがまた大きなポイントでもある
もちろんライブシーンもそうであるが、そこに向かうまでのシーンが印象的

会場に向かう道中、闇に陥り出した頃に出会い忘れられなかった、これから死ぬまで共に歩むジムとの再会、そして実家に戻り、親へ挨拶をするシーン
個人的にここが一番胸打たれた
どんどん人気が出る自分の息子を素直に認められなかった父親
フレディはテレビで流れているLIVE AIDに対し、俺はここに出ると言い、息子が無償で行うこの一大ボランティアイベントに参加することを知った父は息子が良き行いをするという父の教えをしっかりしていることに気づき、ガッツリ握手を交わす
ここが個人的に1番の涙腺崩壊シーンだった

もちろんここでのポイントはもう一つある、一緒に来ていたジムを友達だと紹介し、家族に対し話す時に震える手を握っていた姿を観ていた母妹は息子がゲイであるということに改めて気づく、息子が告白したことを受け止めるような笑みを浮かべる
もちろん少し前にあるポールの暴露により、ゲイであることは世間的に知られていることである
しかし息子が自ら見せたその仕草や言葉に意志の強さを知るのだろう

そしてLIVE AIDの完全再現、これはもう言わずもがなだろう
鳥肌たちまくりの涙が溢れて、高揚感と満足感からやがて心は晴れていくようなそんな気持ちになった
これを含めバンドメンバーの演技が本当に素晴らしい
フレディは写真でしか見たことない存在ではあったが、演じるラミ・マレックの立ち振る舞いや仕草、彼そのものがそこに生き写されたフレディそのものであった
もちろんブライアン・メイ、ロジャー・テイラーもである
バンドを追いかけているようで、フレディのドキュメントとも言えるような作り
本当に心情描写をしっかりしていた
もちろんバンドとしての動きもしっかり描かれていた

にわかのファンであっても、伝説のバンドの曲作り風景、あの名曲はこうして生まれ広まっていったのかというのを肌で感じられる
We Will Rock Youの誕生も痺れた
もう一つ鳥肌が立った印象的なシーンがある
それは言葉の通じないブラジルでのRock In Rioで妻に向けた歌であるLove Of My Lifeを演奏した時にとんでもないほどの合唱が起きたということ
ああ本当にすごいバンドなんだということを思い知らされた
今でも続くこのフェスの初回であり、動員数はウッドストック並みであり、音楽界に衝撃を与えたもう一つのフェス
そのビデオを妻に見せながら君への歌をみんなが歌ってくれたと語りながら、ゲイを告白するシーンも映画ではとても重要な位置付けである

個人的にカメラ回しもすごい好きで、ツアーに向かう車中の真ん中からぐっと抜けていくカメラワークが好きだった
ただ一番大事なLIVE AIDでのシーンの観客のCGが少し雑だったかなと
今の技術ならもっとうまく表現できるはず
まぁそんなことを差し置いてもこの映画は素晴らしすぎた
Queenをたいして知らない自分でもこれだけ感動したのだから、当時ファンだった人たちはどれほどの感動を得たのだろう
自分の人生の中でもかけがえのない一本となった
スタートから20世紀フォックスのファンファーレがロック仕様なのも大好きなポイント
とりん

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