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ボヘミアン・ラプソディのYYamadaのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.4
【戴冠!ゴールデン・グローブ賞】
 ~オスカー前哨戦を制した作品たち

◆第76回(2018)G.グローブ作品賞受賞
 (ドラマ部門)
◆同年のアカデミー作品賞受賞作
『グリーンブック』

〈見処〉
①日本も社会現象!
「応援上映」方式の新たな開拓
・『ボヘミアン・ラプソディ』は、イギリスのロックバンド「クイーン」のボーカリスト、フレディ・マーキュリーの半生を中心に、1970年代のクイーン結成から1985年のライヴ・エイド出演までを描いた伝記映画。音楽プロデューサーはクイーンのメンバー、ブライアン・メイとロジャー・テイラーの2名が務めている。
・本作の特徴は「鑑賞者満足度の高さ」と「リピーターの多さ」。韓国、スイス、トルコなど多数の国で50日を超える延長上映や再上映が相次いだ。
・日本でも、公開初週~5週目まで週末の興行収入が増え続ける異例の作品に。
・また「拍手・手拍子・発声OK!」の「胸アツ応援上映」も定着化。最終的に27週目には国内累計観客動員941万人、興行収入130億円、社会現象となった。
・現在も世界中のどこかで再上映されている「胸アツ」作品である。

②「ブライアン・シンガー」の終焉
・本作の監督、ブライアン・シンガーは30歳で演出した『ユージュアル・サスペクツ』(1995)で一躍注目を浴び、大作映画『X-メン』シリーズの監督に抜擢。
・以降も『スーパーマン・リターンズ』や『ワルキューレ』など、売れっ子監督として活動を継続。
・本作では、当初予定のデヴィッド・フィンチャーの代替にて監督に就任したが、撮影中はスタッフやキャストとの不仲が伝えられ、撮影終盤には「本人及び家族の健康問題」にて長期離脱。
・撮影監督のニュートン・トーマス・サイジェルが代行したが、過去に『X-MEN: アポカリプス』でも無断中断していたシンガーに対し、彼と関係性が深かった20世紀フォックスは、撮影終了2週間前ながらシンガーを解雇。後任にフレッチャーの再起用を発表した。
・最終的に「クレジットされる監督は1人」とする全米監督協会の規定にて、フレッチャーより演出範囲が長かったシンガーが本作の監督としてクレジット。
・しかしながら「解雇された監督」にて、シンガーは、プロモーションや賞レースの表舞台に立つことが出来ず。
・さらに2019年には「4人の青年男性が『ゴールデン・ボーイ』(1997)撮影時にシンガー監督から性的暴行を受けた」として訴えられていたと報道もあり、本作が
ブライアン・シンガーの終焉作品となる可能性あり。

③なぜ「ドラマ部門」受賞?
・アカデミー賞の前哨戦となる、米国「ゴールデングローブ」作品賞は「ドラマ部門」と「コメディ/ミュージカル部門」それぞれ1作品が選出されている。
・第76回G.グローブ賞では、ドラマ部門を本作が、コメディ部門を『グリーンブック』が受賞。作品内容から判断すれば、受賞分野が逆のイメージが強い。
・その背景は、G.グローブ賞の両部門に厳密な境界はなく、どちらにエントリーするかは製作会社の判断によるため。とくにコメディ部門では、過去受賞作『アメリカン・ハッスル』『レディーバード』など基準が曖昧。それでも「コメディ部門」でエントリーするのは、ノミネートのハードルが低いたであり、とくに新興の映画製作会社にその傾向が強い。
・一方、本作のように、G.グローブ賞の「ドラマ部門」エントリーのメリットは、その後に控える「アカデミー作品賞」の受賞可能性が高まるため。
・ネット解説によれば、過去20年のアカデミー作品賞のうち、Gグローブのコメディ部門エントリーは『恋におちたシェイクスピア』『シカゴ』『アーティスト』『バードマン 』の4作品、受賞確率は20%のみ。
・また、同様にコメディ分野からアカデミー主演女優賞に繋がったのは25%、主演男優賞はわずか10%のみ。
・以上を踏まえると、映画製作会社が本作や『アリー/スター誕生』をG.グローブ賞「ドラマ部門」にエントリーした判断は、ラミ・マレックやレディー・ガガにアカデミー主演賞を戴冠させるためと考察出来る。
・本作の世界的な成功の裏には、製作会社の20世紀フォックスによる駆引きが奏効したことを踏まえ、再鑑賞するのも良いかも。

④結び…本作の見処は?
本作のおかげで、日本では、第三次「クイーン」ブームが到来したことに素直に喜びたい。
◎: 史実と異なるタイムラインやストーリー展開など関係ない。冒頭からラストシーンまで駆け抜けるクイーンの楽曲は、複数鑑賞しても物足りない。
◎: クイーン・メンバーにクリソツなキャスティングが素晴らしい。実はフレディが最も似ていなかったりする。
○: ライブ・エイドの再現性はリアルタイムに鑑賞していた世代には、胸アツ場面。自分自身でも、久し振りに劇場に4回足を運んだ作品となった。
○: エンドロール直前に、スロー・バラードで始まる「ドント・ストップ・ミー・ナウ」に心が揺さぶられた。久し振りに「鳥肌が立った」。
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