一生ものの、一瞬
同じ時代の青春映画として「3月のライオン」と「ちはやふる」は長く人の記憶の中に刻まれていくのだろう。
大友啓史監督は「3月のライオン」を「俳優神木隆之介のドキュメンタリー」だと語っているが、さしずめ「ちはやふる」は小泉監督による広瀬すずの成長記録といったところだろうか。
上の句と下の句はそれぞれが対になっていて、映画としては綺麗にまとまっていたが、本作を観ると、まるで1本の作品の様に見事に収束しているのも素晴らしい。
重要な点は、完結編が作られるまでの現実の時間の流れを作品にも反映させている点で、映画では描かれていない部分が、まるで違和感なく物語を繋いでいる点。
本来ならばこの完結編も2部作にしないとまとまらないような長大な展開で、「何を描くか」よりも「何を描かないか」に重点を置いた作り手の巧さが窺える。
プロデューサーは「役者の年齢を考えた時にあと一本は撮れる」と2年前に考えていたそうで、「過ぎ行く一瞬に全てを懸ける」という本作のテーマにダイレクトに繋がるような眩しくてきらめく青春映画の傑作になっている。