140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ちはやふる ー結びーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
4.1
”青春大怪獣総進撃”

2018年邦画暫定No.1。
青春部活映画の金字塔!
漫画実写化映画の到達点!

「Don't Breathe」
映画館が瞬時に勝負に引き込まれ
息することすらはばかられ
勝負の行方にその心を奪われる。

正直、原作をすべて消化すること、キャラクターすべてにスポットライトを当てることは、あまりにランニングタイムを広げることとなり、忠実に丁寧に二部構成にすれば、青春の一瞬の煌めきをを薄めてしまうことになる。前作「下の句」で示されたラストシーンへ向けて、意表を突きつつ、今作の火種と恋心の揺れ動きと、主要人物の約束の地への青春の旅路を120分超というランニングタイムに見事に濃縮させている。今回、引き続き監督と脚本を務めた、小泉徳広の手腕に対して大きくスポットを当てるべきであろう。どうしてもキャラの掘り下げや、前作から進んだ2年の針と、本来成長を描くべきキャラクターを、一言二言、説明セリフでカッティングしなければ、積荷が重すぎてこの船は沈んでしまうだろう。明らかに尺足らずで、成長が雑なキャラ、進化が粗雑なキャラ、粗い設定とご都合主義と言われてしまうリスクを孕みながらも、競技カルタというスポーツティブな内容による弱肉強食性ある世界観に、カルタ×恋心、個人×仲間、過去→現在→未来への繋ぎを、青春群像劇だからこそ許されるエモーションを武器に押し切ったのは見事だったと思う。ラストカットへ繋ぐ水彩画質感のロトスコープアニメーションから、すべての顛末とその後の軌跡の描き方に思わず感涙してしまった。世界にこそ誇れないが、2018年手薄な邦画界において文句なしの上位感情値を記録し、今後の青春映画のスタンダートになること間違いのない映画である。

さて、上記は使い古される称賛の表記になると思われるが、私が言いたいのは、「ちはやふる」実写化におけるサーガは…
”青春大怪獣映画”ということだ。
今シリーズは
・女性キャラは怪獣
・男性キャラは防衛軍
という位置づけになるということだ。
※あくまで個人の考えである。

広瀬すず=ゴジラ
上白石萌音=モスラ
松岡茉優=キングギドラ
清原果耶=バラゴン???(まだ未知数)
という諸説を立てている。
彼女たちは、リアリティラインの破壊者たちである。
「上の句」で広瀬すずゴジラと野村周平自衛隊のぎこちない掛け合いにて、リアリティラインをともに破壊する怪獣として出てきたのが上白石萌音だった。「上の句」のレビューで「ジャスティスの誕生」と評して喜ぶくらいに、現実の境界線を越えてきた2匹の怪獣に胸躍ったわけだ。今作のキャスト陣営の中で上白石萌音は、「上の句」「下の句」公開後に「君の名は。」にて予想だにしない因果の糸を束ねてスターダムを上がってきたことに驚愕し、今作のどぎつい恋愛怪獣たちの中で母性溢れるキャラとしてモスラっている。最近では「バブみ」「オギャル」と母性を求める声が上がっているが、今作の彼女を見ると、きっと上記の表現を時代が求めたのは、厳しい現実や欲による失態を”救済”してくれる存在を求めた結果なのだと認識させられた。

キングギドラは当然の如く、松岡茉優なわけで、今回はコメディリリーフに回ってしまっていたが、明らかに虚実混合のカオスを意図して発動させ演技していることに見る側として勝手にふるえてしまう。今のところバラゴン枠のニコラモデル?の清原果耶のポテンシャルが、劇中の対抗心剥き出しの場面で見られるので、また胸を打ち抜かれてしまった。

そんな大怪獣総進撃を受け止めてるべき男性陣。野村周平は自衛隊として自己犠牲で国を守り、新田真剣佑はイエーガーに乗り込み迎え撃つ。冒頭で異次元の強さを誇った周防名人演じる賀来賢人のアメコミヒーロー的なギミック設定含め、競技カルタというスポーツ競技を邦画随一のスローモーションカメラーワークでスリリングに描き、恋や迷いや成長というエモーションを怪獣映画級のリアリティ破壊で濃密に描いた、愛しき”彼ら”の青春の煌めきに時間を浪費してでも付き合う価値を見出せるわけである。