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ジュリーと恋と靴工場のneroのレビュー・感想・評価

ジュリーと恋と靴工場(2016年製作の映画)
2.0
職なし、金なし、彼氏なしのジュリー25歳。ようやく就職した靴工場で、近代化・リストラの危機に直面して、戦う女として目覚めていく姿をミュージカル仕立てで描く。
ジュリーの状況を見せながらのタイトル・ロールがすべて柔らかな手書き文字で、なんだか懐かしい感じのフランス映画風オープニングに期待が膨らむ。って、出だしはいい感じだったんだけどなあ。

上司のクレマンティーヌ・イェルニクは眼鏡とタバコがすげえサマになってるし、工場のおばちゃん達が実にフランスっぽくていい。社長のフランソワ・モレルも渋い。会長もチャラくて素敵。でも残念ながら主役のポーリーヌ・エチエンヌの魅力がいまふたつ。(モペッドが実によく似合ってはいたけど) 
ヌル目のテンポも、まあフランス映画らしいしっとり風味といえばそうなんだが、ミュージカルならもうちょっと華が欲しいよねえ。ただねえ肝心のミュージカル部分がイマイチなんだ。フレンチポップス感も薄いし、もうちょっと音楽的画面的に盛り上げられなかったんかなあ。
大体ジュリーの意識の変革が良く見えないし、恋愛模様も中途半端に思える。で、ラストは勝ち取った居場所を捨てて恋に走るって、ん?んん??んんん??? だったんですけど。

極端に言えば脚と靴だけでミュージカルにして欲しかった。登場する靴は皆素晴らしかったし、劇中で女たちのシンボルとなる赤い靴”戦う女”がじつに美しい! あの靴と脚をもっとフェチっぽく撮って欲しかったよ。ルブタンなんかの”女っぽい”靴とは対極ともいえるかな。色も形も、特に突出した特徴があるわけでもないのに、媚ることなく「女として自立する」という意思を確かに表現した靴だと感じさせられた。発売したら売れるんじゃないかなあ。
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