八木

グッド・タイムの八木のレビュー・感想・評価

グッド・タイム(2017年製作の映画)
4.0
 すごく感想に困ります。はっきりしてんのは、音楽は合わなかった。僕にとってはうるさかった。あと、チキン屋駐車場で、ものすごく不自然に仮出所の話を長々(再現映像付きで)話すところはそれまでのお話の転がし方に比べてものすごく不自然に見えたのもあるか。でもそれ以外は、全部見終わって「やな映画だったな…」っていうのが素直な感想でした。てことはよくできてたということか。
 あのー、主人公のコニーの行動は初めからずっと間違ってるんですよね。冒頭にあった正しさの「兄から弟への愛情の強さ」も、それ自体も間違っていたのかもしれない。これがアメリカにとってどういう光景を表しているのかよくわからないけど、「弟を救い出す」というところから、『これ結局どうなる話なの、脱線してんなあ』とヘラヘラしながら見てる感じだったのに、どうにもしない話なんですよ。見たらわかるんですけど。兄弟に救いを与えるのではなくて、その場しのぎでも問題が解決するわけでなくて、「兄貴はやり方がいびつでも非常に頑張るが、その努力は報われず、弟には頑張りが伝わらず、その日を最後にずっと浮上もせず、視線が交わりもしない」という、展開が全くない話なんです。こちらの期待感を裏切り続けることが展開と言いますか。映画ってそういう構成じゃなかったよな。新しい試みなのだと思う。
 あと、ものすごく人物に寄った撮り方してるのがこの映画(なのか監督なのか)の特徴で、それがコニーの切迫感とか考えの足りなさを表してるように見えるのよな。視界にもうその情報(の一部)しか見えなくなって、とにかくその場しのぎで何かせざるをえなくなる。または、それをすることが最善のように錯覚してしまう。100分間落ち着いた場面がない状態で、ジリジリと自分で追い詰めていくんですね。こっちはもう「やばいよなこれって…」ずっと思わされる。弟奪還にしたってさ、奪還してどうすんのよって話やん。問題を派手に先送りすることって、申し訳ないけど僕のアメリカ人イメージと結構合致するのよな。
 僕が好きなのは保釈金のくだりです。奪った金が使えなくなったら、金づるのおばさん(出で立ちが派手なのにそうでもないルックスなのがまた超リアルなのよな)に慣れた感じで色目使って引っ張り込んで、それがだめなら金を要求してる仲介業者に「お前でいいから貸してくれ」と突然言ってみて速攻断られるところ、何も考えてなさ過ぎてまじ最高でしょ。これをきっちり映画で表現できてるの最高でしょ。「今の時間なんなの…」って思った。頼れるものが何もない。解決しないんじゃね、と思ったら全然解決してないんですよ。終始こんな感じ。
 いろいろ書いてみると楽しんでみていたのだな、と思いました。知的障碍者のルックスや演技も、職業柄接する機会の多い個人の感想ではありますが、とてもリアルでした。さすがに応答性高すぎる気はしますけど。でも、軽度知的障害って、話せて理解もそこそこいける分グラデーションのところで超ややこしいんですよね。
八木

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