小一郎

狂覗の小一郎のレビュー・感想・評価

狂覗(2017年製作の映画)
4.2
アップリンクで『無垢の祈り』という普通の映画館ではなかなか上映できないような映画がカルト的人気になっていたけれど、そういう雰囲気を感じる映画だった。

観た者を不快にすることで、重大な社会問題を強く印象付けようとする点で、『無垢の祈り』(幼児虐待)と本作『狂覗』(虐めなど)は共通している。『無垢の祈り』はスポンサーがつかず、『狂覗』は映画会社から脚本への注文が付き、監督が自力で作ったという点も同じ。

こういう映画が観れるというのは喜ばしいことだと思う半面、『トガニ 幼き瞳の告発』みたいに商業映画にして、多くの人の心を揺さぶることができないのか日本は、とも思う。

監督が「中学生男女が、SNSを通じてお互いの性器を見せあっている」との事実を新聞の小さなコラムで知り「この悪夢を伝えなければならないと思った」という本作。作品づくりに妥協をしない姿勢は、企画から9年という期間、予算の関係で撮影は5日間ながらも、うち4日は一睡もしていないキャスト・スタッフの熱意にあらわれる。

中学校で教師が半殺しになる事件が発生する。犯人は同校の生徒である可能性が高い。責任を押し付けられた科学教師の森は4人の教師を招集し、体育授業で生徒が不在の教室で、秘密裏に荷物検査を実施する。招集された教師の1人には森の教え子でもある谷野がいた。とある事故で教職を離れていたが、森が復帰させた。

荷物検査によって、生徒、さらには教師の実態、教師半殺し事件の真相が明らかになり、トラウマに怯える谷野の姿も描かれる。そしてこのクラスのキーマンともいえる万田という女生徒の存在が浮かび上がっていくと…。

虐めをないものとして、あるいはすべてを虐めのせいにして、生徒、教師の実態、本質を見ようとしない社会を象徴するかのような内容。実態、本質に目を向けてしまうと、本作のように混乱し、取り乱してしまうから、それらはケガレとして忌避したい。しかし、直視することなしに、問題は絶対に解決しない。そんなことが言いたいんじゃないと思う映画。

上映機会は限られるし、観る人を選ぶ。『無垢の祈り』ほどグロくないけれど、『無垢の祈り』をイイと思った人は、観ても良いかもしれない。個人的にはこうした挑戦的な映画は好き。

●物語(50%×4.0):2.00
・密室の中の手がかりから事実が明らかになっていく様はなかなかスリリング。教職復帰前の谷野についてはちょっとハテナだったかな。

●演技、演出(30%×5.0):1.50
・徹夜で追い込むことで出そうとしたかのような異常な空気感。トークで聞いた監督、役者さんたちのウラ話が結構面白い。

●映像、音、音楽(20%×3.5):0.70
・ヒッチコックを意識したという画作り。ヒッチコックに比べてどうかはわからないけれど、雰囲気には合っていたかな。