サラリーマン岡崎

女は二度決断するのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.3
この映画では「タバコ」がかなり出てくる。
主人公が5分に1回くらい吸っている。
(吸いすぎだろ!)

それは、彼女の強さと弱さをまず表す。
黒ずくめの服を身に纏い、
タトゥーをも身体中に刻む彼女は、
男らしさがかなり前面に出てる。
その彼女が吸うタバコはとてもカッコよく見える。

しかし、夫と息子が殺されたことがわかった時も、
彼女はタバコを吸う。
それは彼女の悲しみを埋めるために必死に癒そうとしているように見える。
(主人公がクスリをやるシーンもあるがそれと似てる)

その彼女の強さと弱さの他にも、
様々なキーポイントで使われている。

特に、一番印象的だったのが、
加害者の父親とタバコを吸うシーンだ。
加害者はヒトラー崇拝者で、その父親はその考えに批判的で、
息子がした罪がもたらした被害者への謝意を裁判中に述べる。
(このシーンはネオナチvsその被害者の世界の少し外に出て、ちゃんと考えを持っている人もいることがわかり、とても世界の希望を感じる良いシーンである)
その後、主人公はタバコの火をもらうのをきっかけにその父親と話すのだ。
その人と人のコミュニケーションとしても使われていることがとても印象的。

そして、無罪になった後に主人公が迎えるラスト。
このラストはある程度想定していたが、
タバコはこのラストを小さく比喩しているのではないかとも考える。
そのタバコの先端にある炎と煙は彼女自身の怒りと悲しみを込めたものなのかもしれない。

その怒りと悲しみをもった彼女の二度目の決断、自分だったらするか?
それはわからない。
でも、自分が彼女だったらやるかもしれない。
それが彼女が最後に担当検事にする電話の中での上告することに対する辛さ、
止まっていた生理が再開したことでの彼女自身の中での心変わりによる悲しみからわかる。
彼女が経験したこと、そして母親であることで決断した彼女だけの結末。

そんな辛い悲痛な運命を見せるこの映画こそが、
ネオナチたちへの復讐なのだなと思った。
監督は「映画では社会は変えられないが、映画は社会を映す」と述べる。
この映画は片方の考えしか描いていないかもしれないが、それでも僕は少なくともネオナチたちへの怒りを感じた。
少しは社会を変えてると思う。