140字プロレス鶴見辰吾ジラ

2重螺旋の恋人の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

2重螺旋の恋人(2017年製作の映画)
4.0
【迷宮】

映画とは旅のようなものとよく言いますが、本作は迷宮ですね。難解であれば、入るとズブズブに浸らされてしまう迷宮に近い快感があります。

原因不明の腹痛に悩まされるヒロインが精神科医にかかり、そのまま担当医と恋に落ちる。しかしその精神科医には性格の違う双子の兄がいた。そして危険な情事へと…

うおおおお!!
この迷宮感楽しいですね。
伏線の張り巡らし方は、記号的であるもののヴィジアライジングされ散りばめられていて、「マルホランド・ドライブ」のようにバラバラなピースを泥沼から引き上げるような狂った難解さではなく、「RAW 少女の目覚め」にあるような散りばめられるピースをヴィジアル化して「ヘンゼルとグレーテル」の道しるべのように誘い水にして伏線の回収と鑑賞者側の推理の末の正解への期待感のボルテージの上昇が一致したタイミングの幕引きを巧く狙ってきていました。

冒頭の髪を切るカットからの不気味さも抜群で、ヒロインに視点を向けさせて双子の登場から事件に巻き込まれた被害者のように映すのですが、何度も出てくる鏡の象徴的なギミック反復とあるタイミングで映し出される君の悪い描写の数々含め、螺旋階段構造を序盤で示した迷宮化されたストーリーラインの正解と不正解なヒントを辿るのは楽しかったです。

「アクロイド殺し」のような禁じ手型のミステリーではないので、劇中のヴィジアルや会話に気を付ければラストシーンは爽快ですし、生々しさのラインを一段階下げて、エグい描写から逃げられぬようにステップを踏んで投入してきたのには悪意を感じましたが、途中やや過剰なサービスなのでは?と思いギャグっぽく思える演出やエフェクトもあり最初こそ睡魔と闘う羽目になりましたが、クライマックスは十分なくらい楽しめました。