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2重螺旋の恋人のumisodachiのネタバレレビュー・内容・結末

2重螺旋の恋人(2017年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

フランソワ・オゾン監督の……サスペンス?ではないか。エロチックでミステリアスな作品。うーーーーーん。好きそうな映画だと思ったのだが、ちょっとピンとこなかった。

元女優のクロエは、原因不明の腹痛に悩まされている。いくら検査しても原因が分からないので、精神的な問題なのかもしれないと心療内科に行くことに。そこで出会った医師ポールと治療を重ねていくうちに、ふたりは恋に落ちて同棲を始める。

自分のことを多く語ってくれないポールに不安を感じたクロエは、ある日ポールそっくりな男性を街中で見かける。男性の元を訪ねてみると、それは同じく精神科の医師をしているポールの双子の兄ルイだった。物静かで優しいポールに安らぎを感じながらも、強引で荒っぽいルイとも関係を持ってしまうクロエ。クロエはその状況にどんどん追い詰められていき……。

もうね。「結局クロエの妄想でした」となることは最初から想像できてしまうわけで、問題はその線引きをどこに置くかになってくる。結果的に、ルイはもちろんポールにまつわるあれこれも全部妄想!というオチだったのだが、それならそれでアーティスティックにふんわりさせておけばよいものを、「腹痛の原因は、クロエが母親の胎内にいたときに吸収した双子の片割れ。妄想は全部そのせい」という妙な「答え」を用意したせいで、一気に陳腐に転じてしまった。

だって、子宮内にあんなにデカい異物があったら冒頭の検査段階でわかるでしょうに。散々いろんな検査をしたって言っていたけど、いくら何でもあれに気付かないってあり得ないでしょ。余裕で30センチくらいあったし!

辻褄が合わないならば、それはそれでいい。全部夢オチでも、全体がまとまっているのならば構わない。でも、下手に現実的な設定を加えて辻褄を合わせようとするのはやめてほしい。辻褄を合わせるなら、しっかり合わせる。矛盾がいっぱい出てくるくらいなら、ずっとクロエの妄想モードで終わらせていただきたかった。

あと、根本的な話なのだが、何度も言うように【女ってこわーい】系の物語が苦手なので、サンドラが出てきたあたりから本格的に観るのがキツくなった。なんで女の欲望っていうのをそこまで大袈裟に扱うのかしら?色んな女と関係を持つ男の映画はたくさんあるのに、2人と関係を持って悩みまくっているクロエをふしだらふしだらと…まあよろしくないけれども(そもそも妄想だけど)、【性欲に負ける女】みたいなキャラクター設定やめません?ルイとのシーンも全体的に暴力的すぎるし。あんなことされても、男を求めずにはいられない女なんて、いません。普通は全力で逃げます。幻想です。

でも、セックスシーンに象徴性を持たせていたのは良かった。無意味なセックスシーンはなく、クロエの妄想や欲望を解き明かすカギとしてうまく演出されていた。謎のエイリアンシーンはやりすぎだったけど(笑) 逆に、美術館のアート作品による作品モチーフの提示は、ちょっと分かりやすすぎたかも。
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