タケオ

俺たちホームズ&ワトソンのタケオのレビュー・感想・評価

俺たちホームズ&ワトソン(2018年製作の映画)
3.3
 シャーロック・ホームズは正統派の英国紳士ではない。薬物中毒、女嫌い、共感性の欠如と多くの問題を抱えているホームズは、端的にいって'人格破綻者'だ。ガイ・リッチーが監督を務めた『シャーロック・ホームズ』シリーズ(9~11年)やドラマ版『SHERLOCK(シャーロック)』シリーズ(10~17年)など、ホームズの'人格破綻者'としての側面にスポットを当てた作品は数多く、いずれの作品も彼自身の'人間的な成長'を描こうとしていた。
 本作は、そんなホームズの'人格破綻者'としての側面を「コメディ」として読み替えようと試みた作品であり、「ガサツな男根性」のカリカチュアライズを得意とするウィル・フェレルの芸風とも相まって、制作陣の狙いは比較的上手くいっているように思える。その一方で、ジョン・C・ライリー演じるワトソンの「去勢された男根性」としてのキャラクターが定まっていないのが惜しい。「ガサツな男根性への批判」というテーマは現代的といえるかもしれないが、本作はそれに対する明確な解答を提示することができていない。『俺たちニュースキャスター』シリーズ(04~13年)が似たようなテーマに対して見事な解答を提示できていたからこそ、本作のピントのボヤけた結末には少々ガッカリとさせられた。
 とにかく無駄な場面の多い作品である。上映時間90分とただでさえ短い作品ではあるが、物語自体は普通にテリングすれば40分ちょっとで完結するものだろう。しかし、あくまで「下品で低俗なコメディ」であることに徹しようとした本作のスタンスには好感が持てる。第39回ゴールデンラズベリー賞で4部門受賞という結果も当然と思える作品ではあるが、「少しでも上等な作品だと思われたい」という浅ましさとは対極にある、清々しいほどの潔さが感じられるのもまた確かだ。
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