ひこくろ

隠された時間のひこくろのレビュー・感想・評価

隠された時間(2016年製作の映画)
4.5
子どもの頃に本気で怖がり信じていたはずのオカルトの世界を、見事にリアルに描き切ったファンタジー映画だった。

まず出だしのスリンとソンミンが心を通わせていくところがたまらなくいい。
どこか自分の居場所を見つけられないでいたスリンが、オカルトを通じてソンミンと二人だけの秘密を築き上げていく姿は、大人が観ても子どもの頃を思い起こさせ、ワクワクさせられる。

そして、そこからの子どもの話と大人の現実が交われない展開もとても面白い。
異世界へ行ってしまい一人だけ生き残って戻ってこれた、と語る成長したソンミン。
スリンだけはそのことを信じる。二人にとって子どものおとぎ話はリアルなものだからだ。
でも、大人たちの反応はまったく違う。
ソンミンは異常な小児性愛者であり、子どもたちは誘拐されたと見なされる。
それもしかたがない。大人の現実世界ではファンタジーなどあり得ないからだ。

ソンミンが語る時間が停まった世界での話も、そこで起こった悲劇も、子ども目線で見ればリアルそのものだ。
でも、一方で、「ただのでたらめ」と片づける大人の気持ちもわかってしまうから、いたたまれない気持ちになってくる。

最後のソンミンの決断にも震えた。
そこから続く一見、幸せそうなラストも、背後がわかるからこそ、素直には喜べない。
苦しさとせつなさが募り溢れるようなハッピーエンドだと思った。
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