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ラッカは静かに虐殺されているの小のレビュー・感想・評価

4.2
イスラム過激派の武装組織イスラム国(IS)がシリア北部のラッカを制圧、爆撃により街は廃墟となり、公開処刑で市民を黙らせる。危険すぎて海外メディアが報じることのできないこの状況を国際社会へ伝えるべく、匿名の市民がジャーナリスト集団「RBSS」(Raqqa is Being Slaughtered Silently=ラッカは静かに虐殺されている)を結成、スマホを使ってSNSに惨状を投稿し、世界を震撼させた。

と、ここまでなら「ペンは剣よりも強し」という諺のように、報道機関ではない一般市民がスマホとSNSという“ペン”を手にしてISと戦い、国際社会の後押しを受け…、という感じなのだけれど、そう簡単にはいかない。

ISはRBSSのメンバーの暗殺計画を実行し、シリア国内に潜伏する彼らを一人また一人と殺害していく。それでは国外に脱出すれば安全かといえば、そうではない。各国にISの思想に共感する人がいて、ISがSNSで呼びかければ暗殺を実行しようとする人がいる。

RBSSのメンバーによれば、ISをつぶしたとしてもその概念(思想)が残る限り第2、第3のISが誕生するという。つまり、人を殺すのはISの思想であって、ISが使うスマホとSNSは剣なのだ。

またドイツに逃れたメンバーに待っていたのが、シリアなどから逃れてきた難民の排斥運動。イスラム教国の入国を禁止しようとする米大統領もいるなど、国際社会は内向きになってきている。こんな中で、我々は何ができるのか。

<とても簡単なことです。ISの思想との闘いに参加してほしいです。ISの思想との闘いは、私たちシリア人だけの問題ではなく、全人類の問題です。シリア人もあなたたち日本人も同じ人間なのです>(RBSSのメンバー、ハッサン・イーサ)。
(http://www.webdice.jp/dice/detail/5595/)

ISの思想をなくすことは困難に違いない。だとすればいかに状況が厳しくても、闘う仲間を増やす努力を続け、立場を逆転する以外に道はない。

思想が人を虐殺する。ラッカの出来事は全世界が抱えるリスクである。

●物語(50%×4.0):2.00
・単に爆撃や流れ弾に当たって死ぬのではない、思想による虐殺。だからこそ、世界共通の問題。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・緊迫感続き、目が離せない。RBSSのメンバーの状況通じ、問題の本質がわかる。

●画、音、音楽(20%×5.0):1.00
・現場の映像の迫力、怖ろしさは唯一無二。
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