三郎丸

テリー・ギリアムのドン・キホーテの三郎丸のレビュー・感想・評価

3.0
【監督の才能にしっかり置いてきぼり…】

本作品はテリー・ギリアムがドン・キホーテの物語を現代に置き換えて映画化したら、こうなりましたってコメディ作品。

小説を読み過ぎて現実と物語の区別がつかなくなった男が、騎士になりきって世の中の不正を正す旅に出ますが。
映画構想30年、幾度も企画頓挫したこの作品に翻弄された、監督自身の想いもドン・キホーテに乗せましたかね…

お話は、
仕事への情熱を失ったCM監督の主人公トビー(アダム・ドライバー)は、スペインの田舎で撮影中、謎めいた男からDVDを手渡される。それは、自身が学生時代に監督し、賞に輝いた映画「ドン・キホーテを殺した男」。
撮影現場に近い村に主人公は向かうが、
当時ドン・キホーテを演じた靴職人の老人は、自分は本物の騎士だと信じ込み、オカしくなっていた…
この
【ドン・キホーテ】
のイカれたじいさんを観て楽しめるか否か?
この作品の評価の分かれ目です!
時代は関係なく、ドン・キホーテになりきり風車を巨人として闘う…
いちいちドン・キホーテを名乗り勇敢に立ち振舞う…なんだか面倒臭いじいさんなんです。

この作品は長年の構想から作品完成までの手間暇をかけすぎて、
色々な部分を見せようとした結果、ごった煮のようになっている
コメディなのか?
ファンタジーなのか?
主人公の妄想なのか?
主人公がドン・キホーテじいさんの土俵にどんどん巻き込まれていくので結末が見えないのは良いのですが…とにかくせわしない!

アダム・ドライバー
相変わらず特徴のある面長顔。
この作品の彼を見るに器用ですね。
混乱する主人公を楽しんでいるようでした。
よくこんなキワイ作品引き受けたなと思います。それだけで評価。

ジョナサン・プライス
ドン・キホーテをヤりきってます。
イカれたじいさんとスッと真顔になる場面の雰囲気の切り替えは素晴らしい。

勇敢なドン・キホーテだと信じる、夢に生きる男と、かつての才能と情熱を失い、現実に生きる男の対比。
周囲に何を言われようと、我が道を突き進む老人は幸せそうでもある。
主人公は自分が運命を狂わせてしまった責任と、その贖罪の旅のようにも見えます。
そのプロセスで、自らの過去を振り返り、見つめ直し、改めて人生に向き合うという作品の意図は透けて見えるのですが、如何せん…
・中世ノリ
・ややグロい物体
をさりげなくぶちこむので、ムダに難解になっちゃったよ…

テリーギリアムの頭にある独特の世界観を時間をかけ、意志を貫き通し作品を完成させたことは素晴らしい!

ただ…もしもこの作品を
「スゲー面白いよ!」
とツヨのオススメの形で友人に勧める人をワタシは見かけたら、2度見すると思います…
三郎丸

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