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希望のかなたの小のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.1
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督による「難民3部作」の『ル・アーヴルの靴みがき』に次ぐ第2作目で、ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)受賞作。

内戦が激化するシリアを追われた青年カリードが、生き別れた妹を捜すうちフィンランドの首都ヘルシンキにたどり着く。妹を捜すことが唯一の望みである彼は難民申請するものの無情にも却下され、ネオナチからはいわれのない暴力にされされる。

一方、洋品店をたたみ、アルコールに溺れる妻のもとを離れて、レストラン経営を始めたビクストロム。ある日、レストランの物陰に身を潜めていたカリードを見つけると、彼を雇い、妹捜しを協力する。

前作の『ル・アーヴルの靴みがき』同様、難民を一般市民が皆で助ける物語だけれど、カリードの苛酷な状況を通じ、一般市民の側にも排外主義的な風潮が広がってきていることを描いている。また、ビクストロムをはじめ、レストラン従業員の無表情なユーモアが可笑しい。特に和食レストランに業態転換する件は笑ってしまう。

本作について、監督は次のように述べている。<私がこの映画で目指したのは、難民のことを哀れな犠牲者か、さもなければ社会に侵入しては仕事や妻や車をかすめ取る、ずうずうしい経済移民だと決めつけるヨーロッパの風潮を打ち砕くことだ。>
(http://www.webdice.jp/dice/detail/5523/)

この言葉通り、カリードを苛酷な状況にあっても人間の尊厳を失わず、自分がどうあれ困った人を助ける人物として描く。彼は路上で歌っている人、物乞いをしている人に躊躇なく、当たり前のようにお金を渡す。難民審査の際には「自分のことはどうでもよく、妹の幸せにしか興味がない」と話す。

そんな彼に対して、フィンランド社会が下した結果は…。<ユーモアに彩られた、正直で少しばかりメランコリックな物語>(アキ・カウリスマキ監督)。3作目がどんな物語になるのかは、今後の社会の行方にかかっているのかな。

●物語(50%×4.0):2.00
・難民問題が実感できる。北の国の政権が瓦解したとき、日本に難民が押し寄せてきたりしたらどうするのか、自分に疑問。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・レストランで働く人のキャラが好き。「大勉強の店」の前かけのレストラン、行ってみたい。

●画、音、音楽(20%×4.5):0.90
・やっぱり劇中の音楽がイイです。
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