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累 かさねのneroのレビュー・感想・評価

累 かさね(2018年製作の映画)
3.0
傷だけ移動しているようにしか見えないっていうのが最大の問題だなあ。二人の女優がそれぞれの表と裏を演じ分ける、いわば一人二役のダブルキャストだと思っていたんだがそうではないのか? 醜さという切り口は取らないという情報は受けていたけれど、二人の印象が近すぎて・・・ どうも人の顔の見分けが苦手なんだよねえ。

ドラマとしては、原作を思い切りよく再構成して、累とニナの二人だけの関係性に絞り込んだことで、映画としてのまとまりは出ていたとは思うが、逆に、二人の舞台女優それぞれのカルマの衝突より、女の嫉妬の闘いという側面が強く出過ぎたという印象が強い。キーになるはずの演出家・烏合に全く狂気感も演劇への耽溺感も感じることは出来ず、単なるチャラ男にしか見えなかった。そのため二人の対立が”男の取り合い”という浅い部分でのものに感じられてしまう。

全体に、累のステージでの印象が勝ってしまって、丹沢ニナが単なる見た目だけの性格の悪い女になってしまっているのが惜しい。ニナには、決して累に劣るものではないがどうしても一歩だけ及ばない位の女優としての資質を与え、さらにその一歩が絶望的に大きいものであることまで描くべきだったんじゃないだろうか。そういう点では少々食い足りない。

劇中劇の各ステージの作り込みはなかなか見事だった。
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