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ドラムラインのRのレビュー・感想・評価

ドラムライン(2002年製作の映画)
3.6
ストーリーだけ考えると、何のひねりもない、ド直球なマーチングバンドのサクセスストーリー。ただそれにしても、特に前半はかなり思い切った設定になってる。天才的なドラマーの男の子デヴォンが、A&T大学に奨学生として入学し、マーチングバンドに所属。伝統に基づく厳しいルールやトレーニングに否定的で、実力だけでゴリゴリ活躍しようとするんやけど、それがパートリーダーや監督の癇に障って仲悪くなっていく。ただドラムの才能はスゴくて、何をやらせても楽々に大活躍。さらに意中の女の子ともラブラブ。誰に対しても勝気で生意気な調子ノリノリのチャラ男くん。そんなデヴォンであるが故に、ある大問題を起こしてしまい、うまくいかなくなっていくって話。特に日本では、主人公のデヴォン君の感じって受け入れられにくいんじゃないかな?と思った。要は、ナチュラルな天才ビッグマウスが、活躍できる場所がなくなっていくって流れやから、出る杭は打ちます嫉妬大国日本では、コイツあかんやろ、もっと反省しろ、謙虚に振る舞え、体制に従え、と最後まで許さなそう。そこは大らかなアメリカ、デヴォン君の心理的変化をものすごくサラッと描いて、いや、デヴォンも受け入れ側も一緒に変わらなあかんねん、と、伝統も革新も双方が手を取り合ってこそ最高のビートが生まれるのだ、と、すがすがしい折衷。個人的には、デヴォン君が伝統を破壊して大変革、も見てみたかった気がするが、これはこれで良かった。ただ若干うーんと思うのは、あまりにもデヴォン君の才能だけが強調されてるところで、実は隠れて地味な練習を誰よりもしてる、みたいなシーンがもうちょいあったら、全体のうす味にセッション的な熱いスパイスがピリッと効いた感じになってたんじゃないかなーと思う。天賦の才と努力型の才とでは、前者は後者に最終的に勝てなくなるという現象をよく見てきたので、そこだけちょっと気になった。努力を知らないまま大人になった天才は、それを超える努力型が出てきたときに、地道な努力と忍耐で能力を磨き上げていく仕方を覚えてないから、怯えるか怒ることしかできなくなる。努力型の天才はほんまにスゴイ笑 けどだからといってその人が幸せかどうかはまったく別問題という人生の厳しさ…まぁそれは置いといて。全体的にかるーいアホっぽさが面白いのと、黒人好きは出てくるキャラがみんなとてもキュートなのでひたすらキュンキュンくるでしょうし、あと、最後になりましたが、バンドのパフォーマンスシーンどれもすばらしい! カッコいい! サイコーにイカしてる! 特に最後一個手前の年号のヤツ、めちゃめちゃ良かった! 見てて思ったのが、やっぱこういうのって黒人の中のアフリカンの血が騒いでるのかな、と。チーム間の闘争って、アフリカントライブからヒップホップに至るまでしっかり受け継がれていて、このマーチングバンドのリズム隊同士の対決も、まさにそんな習慣というか伝統というか、てか血かな、血が騒いでこんな感じなのかな、と思った。どうなんでしょ。
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