きよぼん

クワイエット・プレイスのきよぼんのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.0
この映画の「音」に違和感。

音をたてると見つかってしまう。ホラー映画で緊張感ある状況ですが、その状況をメインに持ってくるという、面白いアイディア。映画としては基本に忠実。ホラー映画の文法、映画の手法に乗っ取った秀作となっています。

しかし、厳しいことを言えば、この映画の売りである「音をたてることのできない世界」という緊張感はイマイチ。なぜなら映画中、余計な音が鳴りまくるからです。

モンスターが現れたときの「ドドーン」や、ぬっと人が出てきたときの「ズギューン」っていう効果音。悲しいシーンの切ない曲などは必要だったとは思えないんですね。

これらの効果音や曲は、状況を説明し、観客の感情を誘導するものです。しかし「音のない世界」にいるはずなのに、演出の為の音だとはいっても、余計な音が鳴ることで、気持ちがスクリーンから離れてしまうのです。

作中の登場人物などがたてる音、つまりスクリーンの内側にある音しか鳴らない方が、クールだったんじゃないですかね。

もちろん普通の映画なら、こういった音は映像を盛り上げる効果を持ちます。しかし、この映画の「音のない世界」という特殊な状況とマッチせず、緊張感をそいでいるように思います。

できれば全編、演出のための効果音、音楽なしっていうのをみたかったんですけどねー。

この映画の場合、余計な演出のための効果音がなくても、モンスターが動き回る音、叫び声でも充分こわかったのでは?音楽も、あるシーンで効果音的に流れる心臓音を使ったものや、劇中でも出てくるウォークマンを使って何かできなかったのか。

でもまあ自分の浅はかな考えなんて制作者はわかっているでしょうから、映画的快楽を優先させたということなんでしょう。

そうは言っても、冒頭でも書きましたが、秀作であることは間違いありませんので。観て損はないです。

普段、これだけ「音」に注意を払って観る映画もそうはないはず。映画ファンは、この映画でホラーと音の関係を考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
きよぼん

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