とりん

ブレス しあわせの呼吸のとりんのレビュー・感想・評価

ブレス しあわせの呼吸(2017年製作の映画)
4.1
2023年13本目

ロード・オブ・ザ・リングシリーズのゴラムのモーションキャプチャー役などで知られるアンディ・サーキスの初の長編監督作品。
本作は「ブリジット・ジョーンズ」などを手がけた映画プロデューサーのジョナサン・カベンデッシュが、自身の両親の実話を自らの製作の元で映画化された。
1950年代、ポリオによる全身麻痺、呼吸器がないと自ら息をすることもできないという重篤な病気を患い、余命を宣告されながらも、家族や友人たちに支えられ、幸せな人生を送った男性を中心に描かれている。
非常に心温まる良い話だった。こういう闘病ものってどうしても心苦しくなったり、観ているのが辛くなったりするものも多いけれど、本作は全体的に明るめで、勇気や元気がもらえる作品だ。
子どもができたという幸せ絶頂の時にいきなり病に犯され、動けない呼吸も自らできないという重病を患い、自らの心も蝕まれ、死にたいと訴えていた。
彼1人だととても生きたいとは思えてなかったし、その意思を変えてくれたのは最愛の妻だった。余命わずかと言われながらも彼は呼吸器をつけて20年以上も生きることができた。もちろんそれは周りの支えあってこそだけれど、彼の生きる意志の強さにもある。
病院の陰気な空気の中で生きるのではなく、院の上の人の静止も押し切り、前例のない自宅療養を試みる。さらには彼と友人の発明家により車椅子に呼吸器をつけて移動も可能にするという、これまでの身体障害者の考えを覆すような素晴らしい発明へと導いた。そしてそれを世界にいる同じ境遇の人たちへ伝えようと動いたのだ。
今でこそ最新機器も誕生し、いろんなことが可能になったりしているが、当時の医療レベルや医療機器はもちろん今ほど高くないわけで、その時代にこんな行動を起こせた人がいたということにまず驚いた。そして彼の元来の明るさと人の良さで、周りの人たちをも巻き込み動かしていく姿にも力をもらえる。
そして病院で寝たきりの生活が当たり前といえる病気だけれど、自宅に帰ったり、近所にお出かけだけでなく、車でドライブ、さらには他国へ旅行までも可能になった。当然命の危機に関わるようなトラブルも起きるのだけれど、それすらも笑いに変えてしまうその強さに勇気をもらえる。
最後の選択もすごく立派なことだし、これまでの彼の人生を観てきたからこそ納得できるものだった。
アンディ・サーキスの初監督作品にしてかなりの良作だし、主演のアンドリュー・ガーフィールドの演技も見事だった。それを支える妻役のクレア・フォイもいい演技をしていた。若い時代から年がある程度いったところまで演技をするがそのメイクアップも自然体でよかった。
そしてアフリカやイギリスの田舎、スペインなどあらゆる土地が出てくるけど、その風景がどれも素敵で、映像の面でもうっとりした。
とりん

とりん