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フジコ・ヘミングの時間の小のレビュー・感想・評価

フジコ・ヘミングの時間(2018年製作の映画)
4.0
ドキュメンタリー映画で初めて知る人が結構いるのだけれど、本作のフジコ・ヘミングもその1人。1999年に放送されたNHKの番組をきっかけに大ブレイクし、60代になってから世界に見いだされたというピアニスト。

日本人ピアニストの母とロシア系スウェーデン人デザイナーの父との間に生まれた彼女は、多くの日本人と異なる風貌と、一風変わった性格で、集団に馴染めない。さらに大事なリサイタル前に聴力を失うなど苦労を重ね、生活も苦しかった。

そんな彼女の人生や人間性が、奏でる音色に出ているのだろうけれど、ピアノやオーケストラ演奏をほとんど鑑賞したことがない自分が映画を観ただけでわかるハズもない。ネットで「フジコヘミング」とググると「へたくそ」という関連キーワードが出てきて、詳しい人から見れば、そういうことなのかもしれない。

でも日本人って、環境に恵まれない人、つまり非エリートが社会で活躍し認められる物語が大好きだと思う。かくいう自分もそういう人の物語に感動してしまう。例えば、人ではないけれど、競走馬のオグリキャップ。地方競馬から這い上がり中央で大活躍するも晩年失速、そして感動のラストランへ、なんてそのまま映画(今でもラストランのテレビ中継のDVDをたまに観ては大川和彦アナの「オグリ1着! オグリ1着! オグリ1着! オグリ1着!」の絶叫に毎回ジーンとしてしまう)。

今一番話題の『カメラを止めるな!』だって、内容が抜群の面白いことだけではなく、予算300万円、監督も無名なら俳優も無名(監督によれば「ポンコツの人を選んだ」)のインディーズ映画ということが驚異的な動員数、上映館の拡大につながっていると思う。

彼らの境遇に自分を重ね合わせ、その成功を称賛、後押しすることで、自分のことにように嬉しく思い、自分の人生も捨てたものじゃないと慰める。

フジコ・ヘミングもそんな物語のひとつ。どんなに苦労しようとも、自分に与えられたものを受け入れて、人生を歩んでいく。そこに光が当たることがあるかもしれないけれど確率は極めて低く、フジコ・ヘミングだってNHKの番組がなければ、無名のピアノ教師だったかもしれない。

でも多くの人にはこの生き方しかなく、だけどこれでいいのだ。同じように生き、光が当たった人の物語を観て日々の悩みを洗い流し、生きる勇気をもらえるから。

●物語(50%×4.0):2.00
・演奏の良さがわからない自分にとっては生きる勇気をもらえる系。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・フジコさんのキャラがナイス。弟さんもイイ。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・映像の美しさが印象に残ったかな。
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