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ミスミソウのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

ミスミソウ(2017年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

過疎化した雪国の、廃校が決まっている中学校が舞台。東京からの転校生であるヒロインは、凄惨ないじめを受けていた。2ヶ月後に卒業を控えていたため、なんとか耐え抜こうとするヒロインだったが、ある日いじめグループがヒロインの家に放火する事件が起きる。両親は死亡。妹も全身火傷で意識不明の重体となる。放火がいじめグループの仕業と知ったヒロインは、彼らに復讐を開始するのだが…という話。

新作は必ず観に行く内藤瑛亮監督作品。公開初日初回に鑑賞。原作漫画は未読。
多分この映画を初日の初回に観るような輩は心に闇を抱えていると思う^_^

邦画の中ではバイオレンスな描写が容赦ないタイプの作品。冒頭から陰湿ないじめが続くし、生徒も親も教師も頭のおかしい登場人物ばかりで目を背けたくなる場面が多い。あまり人にはオススメしにくい作品ではある。僕も鬱々とした気分で観ていた。

しかし、それまで優しく穏やかだったいじめられっ子のヒロインが両親を殺されて復讐鬼と化すシーンは鳥肌が立つほど格好良くて評価が一変。不謹慎ながら心の中で涙を流しながら喝采をあげてしまった。確かにグロい描写は多いが、ヒロインは復讐するに際して策謀を巡らすわけではなく、それまでの柔らかな印象のまま無表情に殺人を重ねていくためか、あまり陰湿な感じはしなかった。ヒロインにも感情移入しやすい作りとなっている。また、いじめの関係についても思春期の少年少女の好意と憎悪が裏表になっている部分を上手く表現していたし、教室では傍若無人に振る舞う子どもたちが家庭では親に逆らえなかったり進路の悩みを抱えていたりと不満や不安を蓄積していることを匂わすエピソードが含まれていて、妙な説得力があった。積もった白い雪と赤い血の対比が残酷ながらも美しかった。

まあ、何と言っても、この監督は「こういう画を撮りたい」と思った衝動を売れる売れない関係なく躊躇せずに映像化する感じがして、たとえ低予算でややチープな技術だったとしても、そのセンスに共感した観客を惹きつけてやまないのかなあと改めて思った。あとメイキング映像観ると毎回すごく楽しそうに撮影している^_^

でも、この映画、監督にオファーがあったのクランクインの一ヶ月前というおそろしいエピソードが。それでよくこのクオリティの作品撮れるなあ…
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