るるびっち

ガーンジー島の読書会の秘密のるるびっちのレビュー・感想・評価

3.4
このベストセラー作品の秘密を探ってみる。
ナチに隠れて検閲本を読む読書会のサスペンスと、失踪した女性を追うミステリーかと誤解した。
実はナチと読書会。失踪女性の秘密というのは、単なる客寄せの口実だ。

では、なぜ本作がベストセラーなのか。
その秘密の一つは、読書好きの内生的な女性でも運命の人に出会えるという部分だろう。
行動的な人や勇敢な冒険家でなくて、本オタの陰キャでも恋ができる。それが男女問わず、運命の絆を信じるオタク読者に響いたのでは?
もう一つは謎めいた島を巡る歴史ミステリー的な部分。
ナチと読書会という意外な組み合わせなども、オタク読者の胸を打つ。

しかし本作の正体は運命の出会いであり、ナチとか失踪とかは誘い文句に過ぎず、実体は浅くて薄い。いつか運命の相手が現れるという、よくある少女漫画的お伽噺だった。

失踪女性の悲劇は、奔放で勇敢な生き方が主人公の行動に影響を与えたという、恋の後押しの役割なので、真剣に歴史の悲劇を感じ取るものではない。単なるお膳立てだ。
なので運命の出会いを諦めているオッサンに響くはずもなく、大した秘密ではなかった。

確かにありがちな運命ドラマでも、目先をナチとか失踪とか島を巡るミステリーとかと組み合わせれば新鮮に感じるだろう。
商売だから仕方ないけど、そういう詐欺商法は『大怪獣のあとしまつ』みたいな炎上を生む元だと思う。
ときめきを呼ぶ、運命の映画ではなかった。
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