horahuki

ブリグズビー・ベアのhorahukiのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
3.9
ニートが映画を作る!!
行動力のあるニートが好きな教育番組の続きを自分で監督して撮ろうとするハートウォーミングストーリー。

心がほっこりするとっても良い作品。
ジャケ画像右のくまさんのデザインが苦手でなかなか手が出なかったんですけど、見て正解!素晴らしい休日のスタートを切れました^_^

あらすじ…
25歳の主人公は父母と3人暮らし。外は汚染されているので、毎日家にこもって児童向け教育番組『ブリグズビーベア』のビデオを見ては続きの予想・考察をして父母に発表する日々。ある日、警察が家にやって来て、自分は偽の両親に誘拐・監禁されていたと知る。当然汚染は両親の嘘。初めての外の世界。迎えに来た実の両親も実の妹も見知らぬ人。今までブリグズビーベアしか知らなかった主人公は…。

幼さって大事だな〜って気づかせてくれる物語。幼さって言い換えれば、損得を抜きにして心から好きなひとつのことに熱中することでもある。成長するに従って、自立して真っ当に生きていくために損(不要)なものは切り捨て、得(必要)なものだけを残すという取捨選択をして人は暮らしている。真っ当に生活するためには、幼さは当然損に分類される。だからこそ人は幼さを、本当にやりたいこと=夢を切り捨てる。

でも本作の主人公は幼さを捨てずに25歳まで生きてきた。幼さ=夢に全力投球で熱中する彼の純粋な姿こそ、大人が過去に捨てて来た自分自身であり、自分の夢を、そして情熱を思い出させてくれるものでもある。だからこそ、彼が周りを魅了していくわけです。警官のエピソードが一番象徴的ですね。

そして『ブリグズビーベア』は誰もが過去に置き去りにして来た夢や情熱の象徴。ネットに上げられたその動画が多くの人を虜にするのは、それぞれの夢や情熱を思い出させてくれるから。現代では彼のように好きなことに好きなだけ熱中し、その情熱のまま何かを成し遂げることは非常に難しいわけで、現代に染まってない彼だから出来ること。それがとってもカッコよく見えてくる。

そんなわけで『ブリグズビーベア』を見せ続け外に出さなかった両親は、そういった考えのもとの行動だったのだろうと思います。もちろん現実で同じことをするのは如何なる理由があっても許されることではないし、幼さ=夢の大切さを描く寓話として成立させることができる映画という媒体だからこそ許されるものではありますが。

そんで、彼の夢は一旦は終わりを迎えるわけですが、恐らく、より進化したものへと形を変えて今後も続いていく。幼さ=夢を捨て去るわけではない。幼さという純粋な気持ちを捨てずに心の中に持ち続け、一歩進んだ彼の夢が走り出すことを暗示するようなクライマックスは素晴らしい。

ただいくら寓話といえど、それ以外のところの作りが甘いんですよね。なぜ人は幼さ=夢を捨てなければならないのか。ほとんどの場合、その理由は金ですよね。本作の場合、金もあるし、本来なら金を出して調達しなければならない機材やなんやかやが揃っているという恵まれた環境。情熱が人を動かし伝搬するというのは、同時期公開の某サプライズ大ヒット映画でも描かれていたことで非常に良いのですが、本作のテーマを描くために避けては通れないところを意図的に避けてしまっているので、物語が若干チープに感じる。逆説的に現代の厳しさを描いた辛いお話しと見ればそこも納得ですが。

でも、そういった細かいところは置いといて、現代人に刺さる非常に重要なメッセージが描かれたとても良い作品だと思います。めちゃくちゃ感動したし、素直に見て良かったと思える素敵な映画でした!
horahuki

horahuki