愛鳥家ハチ

少女は夜明けに夢をみる/ 夜明けの夢の愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

5.0
イランの少女更生施設に密着したドキュメンタリー作品。殺人、強盗、売春、窃盗、ドラッグ犯罪等々に手を染めた少女たちがカメラに向かって身の上話を語ります。その内容は、実は全てのエピソードはフィクションで、痛々しい自傷痕でさえも特殊メイクであったのだと心から願いたくなる程に悲痛なものでした。一方、少女たちが明るく歌い戯れるシーンも映し出され、その様子は個々の暗く重いエピソードと対照をなすものでもありました。

 舞台となった更生施設は、その名の通り更生のために必要な教育プログラムを提供しつつも、同時に、少女たちが罪を犯さざるを得なくなった劣悪な家庭環境や、少女たちを取り巻くあらゆる暴力から彼女たちを守るシェルターとしても機能していました。相互に寄り添い合い、語り合い、笑い合う少女たちの関係性からは、更生施設の重層的な存在意義を見てとることができます。

 イランという遙か西方の国の出来事ではありつつも、日本でも起こりうる/起こっているであろうエピソードが散りばめられていた本作は、第二、第三の「彼女たち」を生まぬよう、個々人がどれだけ他者に寄り添えるかを問いかけているようにも思います。

 総じて、イスラム圏のイランで、男性監督が少女の更生施設内部に入りドキュメンタリーを撮影することの凄さにも照らすと、スコアは【5.0】で確定です。彼女らの上に平安あれとの祈りを込めて。
愛鳥家ハチ

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