馮美梅

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜の馮美梅のレビュー・感想・評価

4.0
1980年の光州事件を外国人記者、そしてソウルで個人タクシーをしていたマンソプが出会い、光州で起きている現実を目の当たりに見て、戸惑い苦しみながら、そしてそこで知り合った人たち交流、別れがありながら撮影した記録を日本に持って行って全世界に知ってもらうために奮闘する物語。

今回もソン・ガンホは凄くよかった。前半では病気で妻を亡くし、娘と2人で生活しながら、個人タクシーとして働いているけれど、それもなかなか大変そうなところに、光州に外国人を乗せて戻ってきたら10万ウォン貰えると聞いて横取りするところはまだまだ牧歌的な雰囲気。

しかし、実際光州に着いたとたん、同じ韓国なのに全く違う世界がそこにあった。なんでこんなことが起きているのかもわからないし、すべてに戸惑うばかり。そしてそこで仲良くなった若者ジェシク、そして光州で運転手をしてるファンと仲良くなりささやかな交流もありながらも、意味もなく勝手に動機づけされ軍や警官たちの暴力に倒れる光州市民。

一旦は一人でソウルに戻ろうとしたマンソプが、光州以外の人たちと今逃げてきたところとのギャップに自分のすべきことを考え、ピーターを日本に送り届けるまで再び光州へ。

自分たちのために犠牲になったジェシク、そしてピーターを空港に連れていくために走り続けるタクシー。もうだめかと思いながらもファンたちタクシー運転手たちの命がけでマンソプたちを助けながらギリギリピーターも日本域の飛行機に乗ることができた。

本当に、光州事件って見ても見てもよくわからない。
独裁国家だったからとはいえ、なぜ光州?なぜ無関係の人たちまで巻き込んで無抵抗な市民を殺さないといけなかったのか。同じ韓国市民なのに…

映画では近年のシーンもありましたが、実際はタクシー運転手だったキム・サボンさんは光州事件から4年後に肝臓癌で亡くなったそうですね。

この作品が公開されることで、息子さん(映画では娘さんだけど)が名乗り出たそうですね。もう少し早ければ生前のピーターさんと息子さんが再会できたかもしれないと思うと残念でならない。映画では結構生活が大変そうな感じで10万ウォンのためにとなっていた光州に行く理由も、事実は以前からピーターさんとは顔なじみで、キム・サボン(マンソプ)さんは一流ホテルの専門タクシードライバーだったそうです。

遠いようで遠くない過去の物語、ピーターさんやキム・サボンさんたちのような人たちのおかげで、この惨劇の事実の一片を世界や嘘の報道を見聞きしていた韓国市民が改めて知ることができた貴重な歴史の記憶の物語でした。
馮美梅

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