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霊的ボリシェヴィキのhorahukiのレビュー・感想・評価

霊的ボリシェヴィキ(2017年製作の映画)
4.1
正直めちゃくちゃ面白かったです!
お話としては、わけわかんないんですよ。色々と考えようとしたけどサッパリわかんない。内容があるのかないのかすら全く…。でも面白い。今まで見たどの映画とも違う新しい感覚を味わえました。これはまさしく革命!!

あらすじ…
廃工場のような場所で実験を行う集団。霊能者1人と主催者1人。そのほかに集められたのは、死に接したことがある男女数名。彼らは円形に座り、一人一人怖かった体験を告白する。主催者たちは、それによりあの世を顕現させようとしていた…という話。

やってることは百物語です。映画としてのクオリティは置いといて、単純にホラーとして、恐怖を与える映像表現として新たな可能性を感じさせる傑作。アイデア頼りの低予算ホラーなんてたくさん作られてきてると思いますが、本作がそれらと決定的に違うのは恐怖演出を知り尽くしてるベテランだからこそできる、ある意味余裕すら感じさせる圧倒的な演出力。

一人一人じっくりと尺を使って、怖い体験談を話していく。評価しなきゃならないのは、下手な再現映像に逃げなかったこと。話し手を正面からカメラで捉えて、重く響くような抑えたBGMの中、ただゆっくりと体験談を語らせる。話し方も内容もうますぎるんですよね。声のトーンや間の取り方、言葉選びなど、完全にプロ。その圧倒的な話力が観客の脳内に鮮明な映像を映し出していく。だから再現映像なんていらない。製作陣にそれだけの自信があるからだけじゃなく、観客を信用してるからこそできる手法だと思います。

そして、恐怖を感じる土台作りがめちゃくちゃうまい。話の合間合間にハッタリの効いた脅かしがあるんです。それ単独で見ると笑ってしまうくらい馬鹿馬鹿しいものなのに、話が進むにつれて、それを許容してしまうというか、いつの間にか恐怖を与えるレベルにまで土台がしっかりと作られてることに後から気づく。計算され尽くした演出が素晴らしい。

観客を一気に突き放すラストの怒涛の展開は賛否あるかと思いますが、あの意味不明な感じがJホラー全盛期を思い出させてくれて、私的には嬉しかったです。ただ、間違いなくこの世ならざる異様な空間を作り出すことには成功してたと思います。そして、各体験談を伏線としてサラッとだけど回収していく流れが怖さという点で良い味出してる。

コレ見て日本のホラー作家のレベルがめちゃくちゃ高いことを思い知らされました。本作は高橋監督が学生と一緒に授業の一環で製作してるので、高橋監督が凄いのか、学生さんたちが凄いのかはわかりませんが、良い現場だったんじゃないですかね。邦画ホラーをダメにしてるのは、間違いなく監督たちではなくて自由に撮らせてくれない環境でしょうね。

こういう作品が出てくるのであれば、邦画ホラーの未来も明るいと思います。次に続く企画が出てくるのか…。今回、気づいた頃にはクラウドファンディングの期間終わってて出来なかったけど、次に同様の企画があれば、いくらか支払いたいですね。

このスコアは高すぎるように自分でも思いますが、この映画が受け入れられるかどうかが、今後の邦画ホラーの行く末を左右するのではと思うので、あえてのこのスコアで!冒頭でも書きましたが、これは邦画ホラーの革命です!
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