こうん

花筐/HANAGATAMIのこうんのレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
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とりわけ大林映画フアンというわけでもないんだけど「この空の花」も「野のなななのか」もロードショーではなく名画座で観て不義理を果たしてしまった気になっていて、本作こそはスバル座で観ると意気込んでいたものの、月日は百代の過客…てなもんで気が付けばロードショー終了寸前。
YAVAY!と思って仕事を放擲して真昼間のスバル座にぶっこんできました「花筐」。

ちょいちょい(仕事の)電話が震えていたけどガン無視で、大林御大のシネマティック・ワンダーランドに埋没しましたですよ!

あー…目くるめく映像絵巻が楽しかったし、”アマチュア映画作家”たる大林宣彦の切実な咆哮に奮えました。
死を覚悟しながら拵えたというこの映画におけるイマジネーションの横溢に、僕はめちゃくちゃ感動しました。

人間がこういう豊饒な、あまりにも豊饒な映画を作ることができるという事実に「人間は素晴らしい!」と思うし、この映画を拵えた大林監督を僕は全力で尊敬します。
一人の人間の思念でもってここまで豊かでまっすぐなイメージとメッセージを作り上げることができるのか!と感嘆するし、映画としてもめちゃくちゃカラフルでスリリングでチャーミングで、映画とはかくも自由であることができるということを教えてくれます。

映画は自由である!(せめて映画の中では自由である)

そのことがなによりも感動的で、涙がちょちょぎれました。
「花筐」そのものがあらゆるくびきから自由であるし、観ているこちらもその自由を享受できる。

映画のすばらしさとは、その心の中の自由の共有だと思うのです。
スクリーンの向こう側とスクリーンのこちら側の、自由な魂の共有。
(その共有が極めて難しく、そのためにあらゆる映画術が存在するのだと思う)

そして40数年の想いを吐き出すように大林監督が紡いだ、戦争直前の性愛の物語に、いま私たちが何を感じるのか感じるべきなのか、丹田にズシンと沈み込むものがありました。

ちょっとこの映画は僕の持っているモノサシでは測れないので、点数はなし!
(普段は面白くなく手かつ申し訳なくて点数つけたくないときにスコアレスにしていますが、「花筐」は逆の意味でのスコアレスです)
だいたい優れた人たちの映画にヘラヘラ点数をつけるなんてなんて烏滸がましい行為!
(今後もへらへらと点数つけると思いますが(笑))

そしてこれだけは書いておきたい、映画館で映画を観ることの僥倖!
観客としてフツーに常盤貴子さんが来ておった!

ちゃんと笑顔でもぎってくれる有楽町スバル座よ、永遠なれ。
間に合ってよかった。
こうん

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