いの

カランコエの花のいののレビュー・感想・評価

カランコエの花(2016年製作の映画)
3.0
この短篇映画を観てから既にかなり日を経ているけれども、この映画のことを時々思い出し、考えている。この短篇映画は、企業や自治体等々のLGBT研修で利用されているということだから、観たあと心に留まり続けていつの間にかこの映画のこと考えちゃうというのは、それだけでもう大成功、ということができるのだと思う。観るものに問いかける映画。そして、その問いかけ方が絶妙。声高になることなく、説諭でもなく、優しく、隣に座って話をしている感じで。隣に座って、静かに、耳を傾ける感じで。話す方は、言葉を途切れ途切れにさせながら、そっと呟く感じで。発した言葉よりも、言葉と言葉の間にある、言葉にならない想いを掬いたい感じで。


「好きになったらしょうがない。恋に性別は関係ないとわたしは思います。」わたしは、養護教諭の花ちゃんがHRで語りかけた言葉にはモチロン全面的に賛成する。いってんの曇りもなく、諸手を挙げて大賛成する。
なのに、なのにね、このクラスに誰か該当者がいるんじゃないかという噂話が始まったとき、わたしもクラスのなかを探したんだ、いったい誰だろうって。誰かが何かのサインを出しているんじゃないかと。映画のなかで誰なのかが発覚する前に、わたしじしんで誰なのかを探そうとしてしまったんだ・・・しょせんわたしはそんなヤツなんだ、サイテーなんだ。そんなわたしを誰も責めたりしないから、だからわたしは自分で自分のそんなところを認識するところからはじめるしかないのかもしれない。わたしなんて所詮そんなもん。だから、だからこそ。



花ちゃんも可愛いし、なによりも高校生がみんなが可愛くて。終盤、HRでの点呼名、その間の沈黙、その間の表情。言葉よりも多くを物語っている。




1週間の物語。時系列に沿って「○月△日」と展開させながらも、発端を最後にもってくる編集が、すごく効いている。







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花ちゃん、
花ちゃんが教室で語った言葉はまさしく正論。でも正論は誰の心にも響かないことがある。いちばん伝えたかったことが、その想いのまんまとしては相手には伝わらない、ということはよくあることでもあるんだ。あとやっぱりこんなことすべきじゃなかったと思う。このことについて言いたいことはいっぱいあるけど、これ以上は言葉のみこむことにする。傷つけてしまったことにとても繊細な映画だから。わたしのこの言葉は花ちゃんを傷つける。




〈追記〉

この映画のこと時間が経ったあとも考えます。どうしてもモヤるところがあって、スコア下げました。
3.7→3.0
いの

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