物語的な没入度や共感度という意味では、なかなかに人を選ぶ映画であると思うし、純情なくせに斜に構えて捻くれている、まるで主人公あみこのように、とっつきにくい奇矯なドラマではあると思う。
キャラクタードラマとしては（役者がみな良い特に春原さんは天性のチャームがある生き物として）とてもラブリーなんだけど、物語として好きになれるかというとオレはあんまり自信がない。
ないのだけど、映画としてめちゃくちゃ塩梅がいい！
若さゆえの呼吸の軽さなのか、エアロビクス的な語りの、心地よく身体を通過する感じ。
具体的にいうと、画角や構図キャラの配置や動かし方音の入れ方カットのつなぎとその長さ、すべてが心地よかった。
教授がヌーヴェルヴァーグを引き合いに出していたけど、オレも観ていてトリュフォーやユスターシュを想起しちゃった。
語りたいことが明確にあって、それをどう映画として魅せていくのか…そのへんの確信が画面に出ていて、これはもう、才能だなと嫉妬するしかない。
ラストショットで示される円環構造に「気持ちい〜」となるし、物語的にも理にかなっているし、そのカットの切れ味も良い！
（またさらに具体的に言えば、ファーストショットと同じ配置構図になってるのだ）
レモンのやけ食いも素晴らしい。よだれが出まくった。
荒削りといえば荒削りだけど、この映画の魅力は監督のパーソナリティと映画的な感性に裏打ちされていると思う。
環境がよければ、次の次くらいで傑作放り出しそうよ、山中瑶子監督。
もう次回作を準備中とのことで、おじさん楽しみだな〜。
あまり好きではないティーチインも素朴で、映画の魅力の源泉に触れられた気がしてよかったです、はい。傍らを跳ぶレモンの香りが忘れがたいです。
