140字プロレス鶴見辰吾ジラ

スパイダーマン:ファー・フロム・ホームの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.2
【Don’t think, Feel.】with間違い探し
※最後に鶴見辰吾ジラの上半期TOP10発表。

「エンドゲーム」を経て、フェイズ3の終幕となる本作。何故「ファー・フロム・ホーム」がフェイズ3終幕なのか?と思ったが、実際私の好きな映画のジャンルの1つである「継承」がテーマなこともありウキウキで劇場へ。本作は「エンドゲーム」で宇宙規模の大決戦になり途方もないヒーロー活劇となってしまったわけだが、今回ピーターの未熟かつ等身大のヒーローが、学業に恋に世界平和に…と王道のコミックヒーローとしての成長と、MCUのビッグ3の1人である“アイアンマン”ことトニー・スタークの後継者となりゆく姿は、神話的な英雄譚よりも我々側に寄り添う物語に成り得る熱量があるわけだ。「継承モノ」として遺憾なく発揮される言葉でない目線によるあの頃を懐かしむシーンを、トニーに仕えたハッピーが示してくれるためAC/DCの「Back in Black」が流れるシーンは感慨深いし、スパイダーマンが最終決戦で、彼のお手製スーツ時代から培った工夫のセンスによってある2つの武器を急ごしらえするシーンがあるのだが、あそこは映画館でふつうに「ウォォォ!!」って叫んでしまった。失敬…

作品の質感はアメコミというよりも、日本の漫画/アニメの方に近い気がして、映画としての親近感に近い気持が湧きあがる。因みに個人的な継承モノは「マリア様が見てる」とか「ARIA」「アイカツ!」とかも入るのだが…

上記の継承モノとして作品を動かしながらも、「学業に恋にヒーロー業に大変!」という喜劇&活劇的な質感もあり、親友のネッドとのやり取りの質感は普通に良いし、フラッシュのスパイダーマン擁護派だけで正体知らなくて…という描写も良いし、何て言ったてゼンデイヤちゃんがマンモス可愛いMJのジト目&時折見せる笑顔のコンボと、念のため持ってきたハンマー?が最高に良い。ゼンデイヤちゃんがカメラに映るたびに加点されていく質感も超最高。その中で愚直というか、お人良しというかピーターの揺らぎがまた見る側の想像・妄想力を掻き立てるわけなので画面ダレが少ない。

そして、そして本作からマルチバースからやってきたジェイク・ギレンホール演じる“ミステリオ”の存在。ここでジェイク・ギレンホールの存在感が一気に解き放たれるシーンが最高!話は一端外れるが、「ユージュアルサスペクツ」という映画が名高い映画な理由として、劇中のストーリー進行において、一瞬妙な引っかかりや突っ込みどころが存在するものの、割と流してしまった挙句に、最終的に敵に「してやられた…」と思った瞬間に記憶が劇中に瞬間的に戻って「あの時か…」と思って悔やんでしまうところが鑑賞者の理解に届くからこそだと思う。本作は割と「間違い探し映画」としての機能も付与されていることと、「カメラを止めるな!」に通ずるような映画構造をメタった視点も内包されている。中盤以降のあるシーンで「エンドゲーム」で途方もない規模の映画となったMCUに作品内のストーリー進行させながら、映画的なメタ視点で一端段を観客側に降りた構造、そしてトニーから引き継ぐという観点で理にかなったことになっている展開が発生するし、「ホームカミング」から続く、敵の等身大像と工夫というお手製スパイダーマン時代からの対になるような構図も面白い。敵の巨大さが「エンドゲーム」に見劣りするのでダイナミズムはランク落ちするが、知恵と工夫ともたらされた技術力で対抗させる点において、今敏監督の「パプリカ」や「パーフェクトブルー」のようなシームレスでかつ、スリリングな空間にスパイダーマンが追い込まれ窮地に陥る流れは度肝を抜かれた。映画というかVR体験的にスパイダーマンの窮地と鑑賞者側もシンクロするという恐怖感が何より良かった。

「継承」「等身大」「メタ視点構造」という3つのポイントを、アクションという虚構の高揚感でジョン・ワッツがコントロールしたのは驚きだし、言葉でない目線や肌の接触、キスシーンなど所作の楽しさも文句なし。ラストで「ホームカミング」で抑制されたNYのあのシーンがVR的な視点でも見られたのは感慨深い。エンドクレジットで3作目への布石の打ち方の等身大視点での絶望感、ポストクレジットでも間違え探しの答え合わせシーンも含めてトータルパッケージでMCUのフェイズ転換として感情的にも論理的にも良いと思わせる映画だった。

追記)「ゴジラ キングオブモンスターズ」よりよっぽど観光映画でした。鳩と戯れるMJが超キュート。



ここで鶴見辰吾ジラの上半期TOP10
1位「ファーストマン」
2位「ミスター・ガラス」
3位「アベンジャーズ:エンドゲーム」
4位「スパイダーマン:スパイダーバース」
5位「運び屋」
6位「女王陛下のお気に入り」
7位「愛がなんだ」
8位「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」
9位「GUILTY」
10位「オーヴァー・ロード」

「ホットギミック」「ハウス・ジャック・ビルト」「ウィーアーリトルゾンビーズ」はまだ見れていない…。