140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ジュリアンの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ジュリアン(2017年製作の映画)
4.0
【おっかねえ】

両親の離婚に翻弄される少年の苦悩を冒頭のオフィスシーンから始め、そして暗転してなる生活音、そしてシーン、暗転して生活音の連続で見せるスリラーである不穏な宣言。序盤の大人の話し合いに同情の余地や誤解の可能性を潜めながらも、別居中の父親とジュリアンが車に乗るシーンの車載カメラとカメラアングルの窮屈感がまた淡々と怖い。徐々に父親の同情が消えていき、後半のジュリアン以外の視点が入るも、一端引きの絵と視点の動きから見える父親の襲来や不安感が纏わり付く。エスカレートが頂点に達するクライマックスは、ここまで何とか距離を置けるとしていた安全地帯が一気に凍りつく。近距離に迫った狂気に対してタイムリミットサスペンスでブーストしたクライマックスとラストシーンから見える扉の断絶は、実は自分たちの半径20メートル以内にも発生しかねない狂気なのだと、ドア越しの穴が物を言う。暗闇や暗転からの生活音の前振りに対して、思う存分に繰り出されるラストの暗闇と閉塞感は間違いなく鑑賞欲とボルテージを高見に導く。