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アイアン・スカイ ディレクターズカット版のbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
「ナチス・ドイツ残党は、第三帝国再興の為、今も南米で暗躍している」
「ヒトラーの首が管に繋がれて、シリンダーの中に浮いている」
などなど、ナチス・ドイツにまつわる陰謀論やヒトラー存命説は、枚挙にいとまがありません。

映画においても、手頃なネタとして使われている設定です。
そんな"ありふれたネタ"化しているこのジャンルの作品界隈において、公開当時から一部の人の心をガッチリと掴み、人気を博しているのが本作『アイアン・スカイ』です。

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ナチス残党物と言えば、平野耕太の漫画『ヘルシング』がハリウッドで映像化するとのニュースが最近出ておりました。
このジャンルの最高傑作は、個人的には『ブラジルから来た少年』と思っています。
ーー閑話休題ーー

本作は、「ナチス残党が月の裏側にナチス第4帝国を築き、地球侵攻を計画していた!」という、アホな妄想のような物語です。
しかし、そんなくだらない月面パートと打って変わる地球パートこそが、この映画最大の魅力と言っても過言ではありません。

「地球侵攻計画に先立ち、地球に降り立った月面親衛隊のクラウス准将が、アメリカ大統領選の広報担当となり、ゲッベルス顔負けのプロパガンダを実施していく」という、地球パートの太宗を占める要素は、時折映画のパロディシーン等も挟みつつ、徹底的な社会風刺を展開する姿は、なんだか真面目な映画を見せられてる気分になるほど。
くだらない内容にくだらない展開、終始徹底してくだらない癖に、やってることは社会風刺とは。恐れ入りました。


個人からのカンパによって制作された本作、イギリスでの劇場公開1日事件等、諸々物議を醸しながらも着々と人気を積み上げてきた本作。
続編含め、〈アイアン・スカイ・ユニバース〉なるものを展開していく予定とのことなので、今後の動向が気になるところです。

フィンランド映画の奥深さが感じられる奇天烈珍映画として、映画史の片隅にひっそりと残ることでしょう。
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