平野レミゼラブル

アイアン・スカイ ディレクターズカット版の平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

ナチスの残党は月面に渡り、月の裏側に基地を作っていた!!というあらすじの時点で「何か吸ったのかな?」という与太話であり、バカを極めてやりたいことを片っ端からやりまくる正真正銘のバカ映画である。大体月面に基地を建てるのはまあいいとして、形までハーケンクロイツにする必要ある!?

本当にやりたいこと先行してるんだなって察せられるのは、なんの脈絡もなく「総統閣下はお怒りのようです」パロを挿入したところで、妙に再現性が高いが物語として必要性は1mmもない。いや面白いし、あの場面って全世界共通でネタになるんだって驚きはあったけど(そういや俺、あの映画MADでしか見てないな…)本当に挿入れたいから挿入れたの精神で映画を撮っているのが伺える。好きだよ、そういうの。
とはいえ、ナチスが月面から地球に降りて大統領の補佐に回った瞬間に民衆の支持を得る『帰ってきた、ヒトラー』を思わせるブラックなジョークや、『チャップリンの独裁者』が月面で逆にナチ賞賛のプロパガンダになっていた等のちょっと捻った風刺ネタも完備している。
アメリカを初めとした各国をおちょくっているが、やっぱり本質は「面白そうだからとにかくおちょくろうぜ!」という脊髄反射のバカ映画だろうし、もう本当に深く考えず表層だけでゲラゲラ笑うが吉である。各国ネタで笑ったのは将軍様のUFOを一笑で流される北朝鮮、なんか宇宙空間でカミカゼ特攻していた我が国、あとしれっと自国はルールは守りますと良い子ちゃんアピールしているフィンランド。愛国心を感じる。本当か?

まあやりたいこと先行の弊害で滅茶苦茶に雑なとこは雑なんだけれども。割とあっさり寝返るヒロインとか、なんかなし崩しに操縦できるUFOとか…一応テンポの良さには繋がっているのでいいんじゃあないかな。
月面基地やUFOの造形、終盤の宇宙戦争には相応にお金をかけて良く出来たCGなのも全てを許そうって気になる一因かもしれない。各国揃って国際法守らない最低さだけど、妙に出来が良くて熱いんだよな、あの宇宙戦争。クラウドファンディングで集めた1億円の使い道が正しすぎる。
ある意味オススメ!

そういや、こないだの試写会で、本作の月面総統の最期が「元婚約者のハイヒールが頭に突き刺さって死亡」なのは「同盟を結んでいたイタリア(イタリア半島をハイヒールに見立てた)が突如破棄したことで滅んだ第三帝国」の暗喩なのかって聞こうとして聞きそびれたな…千代ちゃんは「脚本の人そこまで考えてないと思うよ」って言いそうだしその通りっぽいかもな……