カツマ

怪怪怪怪物!のカツマのレビュー・感想・評価

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
4.4
もし自分という人間が心底嫌だという人がいたならば、是非ともこの映画をお勧めしたい。何しろ人間、下には下がいる。もう底が見えないどころの話ではなく、人間の醜さだけで一つのコスモが作れそうだ。胸糞に胸糞を上乗せし、もう乗り切らないところまで乗せ切ったなら、そこに待っているのは壮絶なる人間ダルマ落としとも呼びたいほどの鮮烈なるカオス。流血は花火のように狂い咲き、悪なるものは焼却炉にぶち込むしかなかった。

この異様なタイトルと異形のポスターで引いてしまう人も多いと思う。だが、日本でもリメイクされた『あの頃、君を追いかけた』でもメガホンを取ったギデンズ・コー監督は、この映画で途轍もない完成度の青春スリラーを作り上げてしまった。テーマを徹底的に『イジメ』に絞りきり、そこに食人鬼のような怪物を挿入することで、人間の醜さと滑稽さ、バカらしさといった負の側面を真正面から突き付けてくる。何と言っても忘れられないほど素晴らしいラストシーンには思わず絶句させられたほど。文句無しに先鋭の先を行く、カルト映画で収まってほしくはない作品だ。

〜あらすじ〜

優等生なはずの高校生リン・シューウェイは教室の黒板の前に立たされ、クラスの会費を盗んだとして公開処刑状態のさらし者となっていた。だが、シューウェイが金を盗んだわけではなく、それらは全てイジメっ子グループ3人の仕業だった。その後もシューウェイはイジメっ子たちの標的にされ、壮絶なイジメに耐えるしかなかった。しかも、何かと無関心を装う担任による、全く有難くない試みによって、3人と共に老人ボランティアへと駆り出されることになってしまうのだ。
ボランティアの現場でも度を越した悪ふざけで遊びまわる3人。そこに混ざるしかなかったシューウェイ。だが、4人はそこで謎の怪物に遭遇、これを何とか撃退する。そして、今度はイジメっ子たちの矛先は怪物へと向かうことになり・・。

〜見どころと感想〜

『イジメ』を題材にした映画でここまで胸糞に掘り下げた作品もあまり見たことがない。それほど序盤の30分のイジメシーンがなかなかにキツい。が、そのキツさが怪物の登場で突き抜けてしまい、そして別の人物への怒りが暴走を呼び、今度はそれにより悲劇が増幅され、、と途轍もない勢いで物事が悪い方向へと転がっていく展開には何度も驚愕させられた。

イジメシーン、怪物への虐待シーン、そして流血が流血を呼ぶ後半怒涛の30分まで、正直胸糞系やスプラッター系が苦手な人にはあまりオススメできない。それでもこの映画は素晴らしいと断言したいと思う。あのラストシーンは全く予想できなかったし、とにかくこの爆裂なカオスは映画の最後を飾るに相応しかった。もっと胸糞がシコリのように残るかと思われたが、不思議なものだ、良い映画を見た充実感の方が勝っている。
人間は醜い、そう思う。だからこそ、こういった醜さを見つめさせる映画は必要だ。ダイハードなイジメへの啓発映画でもあったが、これを道徳の授業で見せたら少しはイジメも減るのではなかろうか。とはいえ、まずこの映画を授業で見せるのがそもそもNGではあると思うけれど(笑)

〜あとがき〜

いや〜、凄かった。これは凄い映画でした。こんなにB級感満載のポスターとタイトルなのに、中身は見事にA級映画です。一昨年の東京国際映画祭で日本初上陸だったようで、昨年には公開もされてましたが、もっと多くの人に見られるべきクオリティだと思いましたね。

かなりの胸糞映画でもありますが、最後まで観ると不思議と胸糞は軽減されていました。それほどクライマックスが強烈なので、あのラストのためだけでも観る価値はあったかなと思います。あまり万人にオススメできる作品ではないですが、我こそは、という映画好きの方にはチャレンジしてもらいたい作品でしたね。
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