円柱野郎

リズと青い鳥の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

TVアニメ「響け!ユーフォニアム」の劇場版。
吹奏楽部でオーボエとフルートを担当する2人の少女の気持ちの揺れ動きを描いた青春ドラマ。

TVシリーズの2期の序盤で描かれた鎧塚みぞれと傘木希美のその後の物語。
北宇治高校吹奏楽部の話というよりは完全に2人の関係性の話なわけだけど、TV版の主人公らを完全にモブに回した思い切りの良さはすごいな。
一応TV版の続編でもあるし、「集団退部を起こしたあの学年」の人物関係や背景を知っている方が理解しやすい部分もあるものの、この作品単独でもストーリーは完全に成立している。
それはやはり2人の関係性だけに話を絞ったからだろうが、語るべきことを語るために割り切ったというよりは「これを語りたい」という作り手の決意を感じる。

山田尚子監督と吉田玲子の脚本コンビが描く青春の情景は最強だな。
いや“最強”という表現が合っているのかは分からないがw
とにかく、青春時代の一瞬にしかない人間関係や心の機微、それらを切り取って物語に映し出す構成力には舌を巻く。
本作で言えば「リズと青い鳥」という劇中の童話と重ね合わせることで心情を描き出していくわけだが、みぞれと希美の2人のどちらがリズでどちらが少女なのか…。
主人公たちがそこに気づいていく過程を、観客に完全に共有させてしまう構成の妙よ…。
「こういうのを感情移入というのだなあ」と観ながら感慨深く思ってしまった。

物語のトーンはTV版とは明らかに違う。
舞台も登場人物も同じだけれど、明らかにこの話を描くためにアニメ的な記号を抑制しているし、カメラを意識したリアル側に振っていると感じた。
このトーンで演出するならば、確かにTVシリーズでやるより劇場映画としてまとめた方が合っているだろう。
この物語を伝えるためにはどういったフォーマットが良いのかという事も含めて、作り手の判断は適格だと思う。

先にも書いた通り、続編ではあるが単作としても完全に成立している。
TVシリーズの視聴者的には、「黄前久美子(ユーフォニアム)と高坂麗奈(トランペット)がオーボエとフルートのソロパート部分を2人で合わせている」シーンが、みぞれと希美の演奏との違いを言葉を使わぬ説得力で表現していてお気に入り。
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