140字プロレス鶴見辰吾ジラ

あさがおと加瀬さん。の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

あさがおと加瀬さん。(2017年製作の映画)
3.5
”ストレスフリー”

可愛いものを愛でられること。
甘酸っぱさに溺れること。
どうかこの世界よ、
壊れずに高く高く飛んで
LA LA LA
宇宙の風に乗ってくれ。

冒頭シーンでホラー映画の如く
縛られるような緊張感はなく
「レイジングブル」のデ・ニーロの如く
一方的に痛みの雨を浴びることなく
ただ美しく、可愛らしいものを
愛でられる優しい世界よ
どうか現実に気を使わないで
どうか責任の所在など考えないで
苦いコーヒーは飲み干さず
甘い果実を、禁断の果実を
惜しげもなくかじりついて
この箱庭に鍵をかけて
胸の奥に思い出として留めておくれ。

現実の片隅に蓋をされたような真実の姿は、どうかこの時は影を見せないで、たまには甘い監獄の中に、胸に秘めた理想だけを流し込みたいときだってある。だから普段の会話じゃありえないような「はわわ」とか「フヒヒ」みたいな浮世離れな声を聴いて、好きな人の部屋で、1人ベッドの臭いを嗅いで恍惚の表情を浮かべられるような優しい世界に浸らせてほしい。これが俗に言う「尊い」という感情なのだろう。いつか来る箱庭の終焉にやきもきして、じりじりして、これで最後だと気がついても、振り返る彼女を抱き寄せて、もう1度…と後悔しない、責任の負えぬ、優しきボニー&クライドのように山田と加瀬さんを遠くから眺めて恍惚の表情で愛でていたい。

ただ最後のセリフは敢えて言わないでおいて、ウィキペディアか何かで調べて「ムフフ」と観客に思わせて劇場を後にさせて欲しかった。