河豚川ポンズ

ファイティング・ファミリーの河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

4.2
スポ根?いいえ、ハートウォーミング・ファミリーコメディ・レスリングな映画。
後にも先にもこんなジャンルになりそうな映画はこれだけだわ。


イギリスに暮らすべヴィス一家は家族で小さなプロレス興行行う、まさにプロレス一家だった。
しかしその人気は良いものとは言い難く、いつまで続けられるか時間の問題でもあった。
そこで兄のザック(ジャック・ロウデン)と妹のサラヤ(フローレンス・ピュー)は大きな勝負に出る。
プロレスの本場であるアメリカのプロレス団体WWEに自分たちの試合のビデオテープを送り、トライアウトに挑戦するのだった。
自分たちがWWEの大舞台で活躍すれば、一家の興行ももっと人気が出るはず。
そして何よりプロレスラーなら誰もが憧れる夢の大舞台に立つチャンスに賭けてみたかったのだ。
無事ビデオ選考を通過したサラヤたちは、ついにWWEトレーナーのモーガン(ヴィンス・ヴォーン)によるトライアウトに挑むのだった。


今の時代、日本海外問わず、プロレスを見る人はかなり減ってしまったのだろう。
かくいう自分も特定の誰かのファンというわけでも無く、ただ派手な格闘技の試合が見たくてYouTubeで眺める程度。
それでもやはり世界中でいまだに根強い人気があるようで、この映画も元々は実在の女性プロレスラー『ペイジ』のドキュメンタリー番組を映画へと脚色し直したもの。
そしてその映画製作企画に名乗りを上げたのが、みんな大好きロック様ことドウェイン・ジョンソン。
さすがは全ての娯楽界一シビれる男が見込んだこともあって、最初はアメリカでも限定公開だったのが、1週間後には上映館の拡大が決定していた。
プロレスに全く興味のない人からすると、何が面白そうなのか皆目見当もつかないだろうけど、むしろそういったことをよく知らない人の方が案外楽しめると思う。
プロレスというものが台本ありきの八百長染みたショーみたいなものではなく、怪我覚悟で互いに技を正々堂々全力で打ち合い受け止め合い、その上で観客に興奮と感動をもたらすエンターテイメントなんだということがよく理解できるはず。
そんな華やかな大舞台を夢見る家族がこの映画の主人公となるのだが、これがとにかくアツい。
兄妹で同じ舞台を夢見て努力してきたにも関わらず、かたや夢のステージへの切符を手に入れ、かたや出口の見えない今までの生活を続けることになる。
単なる女性プロレスラーとしてのサクセスストーリー終わるのではなく、夢を追うことの光と影、そしてそれを受け入れて選べることの強さとそれを支える家族の絆に心を打たれる。
ロック様が惚れ込むのもよく分かる。

主演のフローレンス・ピューとジャック・ロウデンはここ最近になって有名作品に立て続けに出演して頭角を現してきた注目株。
フローレンス・ピューなんか、この映画観た時には完全に無名の新人だったのに、「ミッドサマー」「ブラック・ウィドウ」に主演・出演、そして「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」でアカデミーにノミネートまでされた。
まだ主演作なんて本当に指折り数えるほどしかないのに打率が良すぎる。
しかも自分と同い年と知ってさらに衝撃だった…
両親役のニック・フロストとレナ・ヘディ、コーチのヴィンス・ヴォーンもなかなかいいキャストで、この名前の並びならコメディだろうと思ってたこともあったのに、すごくよかった。
ニック・フロストの、たまに良いヒューマンドラマに出る周期は本当に一体何なんだろうか。
しかも高確率で高評価という謎。

ストーリーはありがちな話ではあるけど、自分が全く期待せず前情報なしで観に行ったこと、ベタベタだけどアツい展開がとにかく刺さりまくったので、自分的にはすごくいい映画だったなあ…