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恋は雨上がりのようにのneroのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
3.5
高校女子100m11秒44って早いの? 運動会ではいつもどうやって休もうかと考えていた運痴ぼんずだったので、加瀬くんの「スポーツなんかやるやつの気が知れないけど・・・」ってセリフが一番沁みたのでした。つーか原作見返したら200mじゃん!

原作大好き! 連載1回目であきらに速攻惚れ込んだじじいとしては、小松菜奈の無表情で真っ直ぐ”睨みつけるような”視線が実にイメージどおりで脊髄ゾクりとしちゃったのでした。「坂道のアポロン」の律子と同じ人とは思えない。ふともものたくましさも、実際のアスリートの目からはどう見えるか知らんが、走るシーンなど少なくとも陸上競技者としての説得力を感じさせるボデイだった。女優ってすごいなあ。 
脇を固める久保さんもユイちゃんもいいが、みずきちゃんが絶良かった。喜屋武ちゃんだけはイメージ違ったなあ。吉田羊もったいないが、母の出番が少ないのは仕方なかろうね。店長近藤を始めとする男性陣もあざとさがなく好感。近藤(大泉)=九条(戸次)の同級生感(さすが本物)が良かった。

正直アニメ版は、作り手の男目線が端々に感じられ過ぎて違和感があったが、映画版はなかなか幸福な仕上がりと言えるんじゃなかろうか。
原作漫画が、淡々とした点景的描写の積み重ねで、大きなうねりのあるストーリーという作り方はしていない。そのため、実写化による肉体的な存在感、そしてディテールの強化がいい方に働いていると感じられた。特にファミレスで過ごす時間は説得力があったし、エピソードの繋がりも不自然さは感じなかった。
JKあきらの真っ直ぐな想いに翻弄される中年店長近藤、二人それぞれの恋愛以前の微妙な関係性を、生々しくない青春エンタメとしてうまく描いていたと思う。

気になったのは終盤。原作(最終話)ではあえて無音で表現していた、近藤からあきらへのエールでもある訣別を、言葉にしてしまったのは賛否ありそう。
2時間の映画ではやむを得ないのかもしれないが、あきらの想いが喪失の代償行為であることに無理やり落着させられてしまったようで、もう半歩だけでも二人の心の裡に迫ってほしかった。
そのせいか、エンディングがブンガクオヤジのロマンチシズム溢れる自己満足にしか見えなくて、「結局男目線かよ」と、最後で少々落胆を感じたというのが正直なところ。

紛れもなく恋であったのだと、それぞれに自分の想いを肯定するエンディングであって欲しかったと思うのですよ。
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