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ルイスと不思議の時計のhorahukiのレビュー・感想・評価

ルイスと不思議の時計(2018年製作の映画)
3.3
辞典読むのが大好きな変わった少年ルイスくん。
彼のおじさんはなんと魔術師だった!
不思議なことだらけなお屋敷で、ルイスくんとおじさん、そして隣のおばちゃんがちょっぴり怖い騒動に巻き込まれるファミリー向けホラー映画。

イーライロス監督がどんどんホラーから離れていく…。本作は一応ホラーだけど、同時期公開『デス・ウィッシュ』は完全にホラーじゃないですよね…(^_^;)オリジナルがそもそも違うし。もうガッツリホラーは撮らんのかな。

あらすじ…
両親が亡くなり、叔父に引き取られたルイス少年。なんと叔父は魔術師だった。でもその実力はダメダメ。お隣さんは一流の魔女。ルイスは2人に可愛がられ、ちょっとずつ魔術を覚えていく。でも、辞書を読むことが趣味な言葉大好きルイスくんは学校では変人扱い。友だちが欲しいルイスくんは気を惹こうと、叔父から絶対に開けるなと言われる扉を開けてしまい…。

アンブリンだからスピルバーグの意向なんだと思うけど、子供向けにしては結構ガッツリホラー演出入れて来ますね。『ポルターガイスト』でもそうだったし、安心して見に来たキッズを震え上がらせてトラウマ植え付けることが大好きなんだろうなー。本当にスピルバーグは人が悪い!

ジョナサンの家には時計がいっぱい。椅子(可愛い)は動くし、絵画に描かれてるものも勝手に変わる。ジョナサンは夜中に屋敷をウロウロして斧で壁をバキバキやってる。そしてルイスくんの枕元には死んだお母さんが現れて、「悪いことが起こる。それを防ぐために〝本〟を探しなさい」と告げる。そんなちょっぴり不気味なファンタジー+アドベンチャーな要素てんこ盛りなところに、急に現れる不気味な人形たちや襲い来るカボチャ等、子どもにとってはインパクト大なホラー展開がいたるところに。

魔術は自分の言葉で唱えるから効力を発揮できるというのは、ジャックブラックが演じるジョナサンおじさんの言葉。これはまさに本作のテーマそのもの。人の多様性というか、「普通じゃない」ことは恥ずべきことではない、「普通じゃない」ことこそが魅力だという、全ての人に向けた人間賛歌。そして子ども向け作品として、とても前向きで現代的なテーマになっていると思います。

本作の魔術はそういった性質なので、その人独自の言葉で唱えないと魔術は効力を発揮しない。すでに存在する何かに染まるのではなく、心の底からの「自分」を恥じることなく解放し、すでにあるものを逆に自分色に染めていく。それこそが魔術であり、その人の「変」を個性と捉えて自分に自信を持つということ。本作のクライマックスではそういったことが表現されているし、心に不調を来した時には魔術の調子が悪くなるのは、そういったところが理由となっているのだと思います。

ただ、なんかイマイチ見せ場を見せ場として演出できてないように思うんですよね。ジョナサンの言葉のあと、特に苦労することもなく速攻魔術を使い始めるルイスは描写をすっ飛ばしな気がするし、友だちの少年との関係性についても消化しきれてない…というか乱暴。そんであの結末は閉じた感じが残ってしまったように思えるんですよね。子供向け映画なんだから、もっと開けた大団円で良かったんじゃないかな。

子ども向けホラーにイーライロスを起用するのって『ポルターガイスト』でのトビーフーパーっぽいから、ちょっと期待してたんですけどねー。イーライロス監督には、またガッツリホラーに帰ってきてほしい!
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